オレたちが自由だなんて
誰が言い出したんだ?
空を飛べるからって
自由な訳じゃない
ちょっと考えりゃ
解ることだろ?
自由の象徴みたいに言われるのは
いい迷惑ってもんだ
なあ
そうは思わないか?
―――自由と不自由
#49【鳥のように】
船で沖に出る
穏やかな青空
係の人に促される
そっと白い粉を撒く
散骨
さようなら愛する人
もっと話したかった
花びらを撒く
さようなら愛する人
もっと一緒にいたかった
酒を撒く
さようなら愛する人
もっと
もっと
―――終の別れ
#48【さよならを言う前に】
寒空の下、帰宅を急ぐ。
見上げると今にも降り出しそうな空。
もしかしたら雪になるかもしれない。
[キムチ鍋] [水炊き鍋]
・豚肉 ・鶏肉
・鱈 ・白菜
・白菜 ・大根
・大根 ・人参
・白葱 ・椎茸
・ニラ ・白葱
・えのき ・豆腐
・豆腐 ・春雨
・〆のラーメン ・〆のうどん
寒い日はお鍋に限る
さて、どっちにしようかな。
タイムリミットは彼が帰ってくる8時。
用意、スタート!
―――口福な[夜]
#47【空模様】
鏡を見る
少しも磨かれたことのない曇った鏡
鏡の向こうにシケたツラが見える
腹立たしさ情けなさ苦しさ
様々な負の感情が綯い交ぜになって押し寄せてくる
耐えきれなくなって感情を鏡をぶつける
叩き割られた鏡の破片が床に散らばる
肩で息をしながら下を見る
散らばった無数の破片に無数のシケたツラが映る
「増えただけじゃねーか」
腹立たしかったのがだんだん笑えてきた
ポタリと血が垂れる
まだ生きてやる
そう誓った
―――誓い
#46【鏡】
家族とも友だちとも縁を切った
写真も思い出の品も全て捨てた
唯一捨てられないのはこの記憶
いつまでもどこまでもついてくる
何よりも一番捨てたいのに
どう足掻いても捨てられない
記憶喪失になれたらどんなに楽だろう
全てを忘れて一から生き直せたら
何もかもが新鮮で
何もかもが感動で
記憶に雁字搦めにされたまま生きるのは
今の私には苦しすぎる
でも今の私には
この状況から抜け出す術がない
ああ
―――To be, or not to be: that is the question.
#45【いつまでも捨てられないもの】