さぁ行こう。真新しい空の旅。
何も怖くないよ、君には生えたての羽があるから。そうして君が生きた世界を見るんだよ。雲の上は晴れも雨も関係ないさ、君が思うがままに飛んだ日が、過ごした時間が、君の全てになる。
だからもし、君の友達で不安がっている子がいたら、ぜひ伝えてあげて欲しいんだ。
「命を落としても天使になれる」って。
何もかも怖いことが全てじゃないよ。真新しいふさふさの羽がその証拠だ。君も飛べる、僕と一緒に、さぁ、
/さぁ行こう
水たまりは、自然が作る鏡だ。
昨夜の雨は酷かったはずなのに、今朝は晴天だった。それでも、地面にあるいくつかの水たまりが昨夜を決して忘れさてくれない。
水たまりを覗けば電柱も家の屋根も、公園を囲む木々も水たまりの中にあった。水たまりにうつる空は綺麗に見えた。実際の空を見て綺麗だなんて感じることはないというのに。
反射して見える街すらもとんでもなく綺麗に見えて、頭が痛い。虚像のような気もしてしまう。そんな自分が嫌になる。
僕は美しい鏡をわざとらしく踏んづけて駅に向かった。全てを忘れるために。
/水たまりにうつる空
パチパチとなる音の隙間から水滴に滲んだ見慣れた景色が見えてくる。
サーサーとなる音。灰色の雲。雨の中に入り込むような感覚。自分一人になるような。置いてかれるような。
頭がガンガン揺れる中、見知った景色が水滴に味方されキラキラと輝いて見えると、なぜか安心した。
もう、目の奥に力を入れなくてもよいのだ。
視界が歪むのは雨のせいなのか、自分自身のせいなのか、もう僕は何もわからないでいた。でも、もうどちらだってよかった。僕すらも知らない真実は、傘の中だけが知っている。傘の中だけの秘密だ。
石ころにつまずいて、張っていた水分がほろっと地面に落ちる。けれども、濡れているコンクリートには何一つとして証拠が残らなかった。僕はそれが嬉しかった。
/傘の中の秘密
人生に勝ち負けなんて、ないという。
偉いさんがそんなことを言わなくても、世論や世間はそんな事分かりきっているはずだ。
けれども今日の自分は、“勝ち”であった。誰がどう見ても、百発百中で勝ちだ、と言ってくれるような。そんな日だった。
まず、昼に起きるのが勝ち。姉と電話して勝ち。ふと冷製パスタを調べたのも、たまたま近くの線沿いにポポラがあったのも勝ち。そのあと実際に食べに行ったのも勝ち。気になってた喫茶店で小説を読みながらプリンアラモードを食べたのも、もちろん勝ちだ。
そして夜には三時間の映画を観た。強いていうなら途中土砂降りだったことと少し肌寒かったことくらいか。
負けの値より勝ちの事実の方が多い。だから私は幸せを感じたし、優越感にも浸っている。
人生に勝ち負けは、確かにないのかも知れない。
しかし、日々の一日一日にはきっと勝ち負けがある。
私は、今日の戦いに間違いなく勝ったのだった。
/勝ち負けなんて