「虹のはじまり…虹が出てるところってさ、いくら
使っても無くならないくらいの金銀財宝が入ってる袋があるんだって。」
重たい剣を床に置いた彼女はそう言った。
それは、よくある根拠のない御伽話。
そんな化学的に説明できないような理相談を、
私は信じることができない。
不服そうな顔をしながら鍋の湯を沸かしている私を
見て、彼女はこう続けた。
「この戦争って、金山の取り合いでしょ?それならさ、その袋を取りに行った方がずっと平和でずっと
楽じゃない?」
私は目を逸らした。そんな袋なんかない、なんて言えない。私の反応がいつもと違ったのが面白かったのか、彼女はこう言った。
「この戦いが終わったら、私がその袋を探しに行ってあげる。私が帰ってくる、その頃になったらさ、世界は平和に戻ってるかなぁ?」
ぼろぼろの布がたなびいて、彼女の顔に柔らかな光が差した。私は、彼女の指先が透けている…いや、透けそうになっていることに気がついた。
「虹のはじまりを探して」
真実の愛が欲しい
ただ一つの汚れもなく
何かに染まっているわけでもない
真っ白な心からの愛
でも
それは欲張りなことで
みんながみんなできる芸当じゃない
それに
汚れた手でも
黒に染まり切った心でも
誰かのために
今をを変えたいと思えば
いつだって
今からだって
真実の愛は生まれるもの
「True love」
押入れの中の段ボールを一つ取り出した。
他よりも小さいそれを開けると、白色の梱包材が
出てきた。
その梱包材を丁寧に剥がすと、チリリと音がした。
透明な体に、金魚や水草の涼やかな模様。夏の風物詩とも言えるかわいらしい音色。
それを窓辺のフックに取り付けて、窓を開けると、
優しい風がここぞと言わん限りに部屋を吹き抜けた。
チリリ、カラリ、チリン、リリン…
夏の…いや、風鈴の音がした。
「風鈴の音」
何かに追われている
時間に追われている
鬼ごっこの鬼に追われているような
忘れ物をしたときのような
焦りをずっと抱えている
逃げられる場所はどこにもない
隠れられる場所もない
もしこれがただの鬼ごっこだったら
これがただのかくれんぼだったら
どれだけ良かったかと思い続ける
体はどこにも逃げられないから
心だけ、逃避行
「心だけ、逃避行」
星に願い事を。
今日は年に一度の日。
離れ離れになったあの人と会える日。
大層なご馳走を食べたり
親族みんなで集まったりすることは少ないけど。
私にとっては特別な日。
だから
短冊に願いを込めて
星に願うの。
「この平和が、この幸せが、何十年でも何百年でも、
たった一分でもいいから、続きますように。」と。
「願い事」