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10/27/2023, 9:50:07 PM

私の好きな人の匂いが好き。香水ほどまとわりつかなくて、でもシャンプーほど軽くもない。すれ違いざま、静かに影を残していくような香りがふわっと奥をくすぐって振り返る。その先は好きな人じゃなくて、私の後輩が歩いていた。そうか、やっぱりそういう感じなのね。認めきれない自分と、微かな優しさがばらばら崩れていった。

(紅茶の香り)

10/4/2023, 4:24:42 PM

誰かのミスで会社に缶詰状態にされてから2日。簡易的な進捗報告の会議が開かれたものの全員の目が据わっている。報告を聞くに、どうやら峠は越したらしい。しかし解決には至らず、延々と続く会議に何人かは船を漕ぎ始めている。何か起こるわけでもなかった長い沈黙のもとへ、離席していた上司が手に大量のピザ箱をぶら下げて戻ってきた。なんでやねん。わらわらと集まる仲間たち。あれよあれよとアメリカンパーティーの始まりである。上司曰く「打開策出すためにはな、馬鹿になることも大事なんやで」とのこと。まあそういうことなら遠慮なく。

(踊りませんか?)

10/3/2023, 4:05:46 PM

小さい頃から小狡い奴だった。俺のランドセルに石詰めるし、人のベッド占領するし、過去問貰ったこと言わないし。社会人になって会えないと思っていたのに、偶然入った定食屋。隣の席がこいつだった。しばらく話している中で、「おれ、お前に色々迷惑かけてたよなあ」と言われた。昔からお前の隣で食う飯は美味いよ。

(巡り会えたら)

6/26/2023, 1:15:43 PM

SNSのアカウント、全部「移行します」とかふざけてるの?って思ってた頃はまだ良かった。今の君の住んでる所も知らないし、LINEもDMももう動かせない。またね、って言ってくれた声も思い出せなくて顔もおぼろげ。唯一覚えてるのは君のカラオケの十八番の曲。原曲聞いてもなんか違うから、もう一度だけ君の声で聞きたい。それだけ。

(君と最後に会った日)

3/21/2023, 2:12:35 PM

鏡の前では本当のぼくになれる。お金を貯めてこっそり買ったキラキラのアクセと、たくさんのフリルがついたワンピースは、中々様になっているんじゃないかと思う。こんなに可愛くなっても、ぼくを見てくれるのはこの鏡しか居ない。別に寂しいとかじゃないけど。

(二人ぼっち)

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