大人は学生のわたしたちが羨ましいって言うけど、わたしはずっと大人になりたかった。明日からは髪も染められるしピアスも開けられる。でも、待ちわびた授業終わりのチャイムの音とか、どきどきした席替えとか、学期終わりの教科書の重さとか、もう体験できないって思うとちょっと寂しい。これが大人になるってことなのかな。
(過ぎ去った日々)
若かりし頃、あなたは私の手を取って逃げ出してくださいました。ずっと一緒に居よう、ともう一度改めて手を取ってくれたこともありました。やはり永遠とは難しい言葉ですね。先に離したことは水に流してあげますから、来世でもまた私の手を掴んでくださいね。
(始まりはいつも)
試合直前に円陣を組んで、相手チームの情報交換をするのがルーティーン。それが出来るのもあと少し。今日のチームのコンディションは悪くない。大丈夫、俺たちは飛べるから。仲間と一緒にありったけの気合いを声に乗せる。試合開始の笛が鳴る。
(高く高く)
別れたい、って文字が打てないくらいに手が震えた。でもそんなに悪くない別れだったと思う。私が忙しくなって、時間を作れなくなって、会うことがしんどくなって別れてもらった。自分が悪いし後悔はしてないけど、あの人以上に私を愛してくれる人は多分もう現れない。
メッセージが来た時は息が詰まった。話している間は心臓が破裂しそうだった。どうにか別れられないように話を引っ張った。あの子は立ち止まらずに生きていけるから、俺の事を思い出すことはないんだろう。俺はあの子が良かった。あの子しか駄目だった。
(涙の理由)
先生は好きなルーとかあるの?と聞かれて我に返った。まさかこの子に料理を作ってもらう日が来るなんて。人生何があるか分からない。
「…ごめん、わたしはグリーンピースもにんじんも食べられない」
「嘘でしょ」
子どもじゃん、と馬鹿にされても許した。それ以上にこの子が料理を作る姿を見られるのが楽しみだった。
(ココロオドル)