yuhi

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5/10/2023, 10:35:27 PM

休憩するのにちょうどいい花がある。
モンシロチョウがその花にとまろうとしたとき、アゲハと鉢合わせになった。

モンシロチョウは、どうぞとその花を譲る。

アゲハは「ありがとう」と美しい羽根をヒラヒラと翻した。

「あのときのお礼」

と、恋人ではない彼女はぼくにキスをした。
揺れる前髪がヒラヒラと美しい。

5/2/2023, 12:39:14 PM

「優しくしないで」と言われたけれど、優しくした記憶がない。

とりあえず「ごめんね」と謝ったら、
「だから、優しくしないでよ」と念を押された。

だから、優しくしてないんだけど。と言うのはやめておいて、泣き止むのを待つことにした。

「優しくしないでって言ってるでしょ……」

優しくしないのは、難しい。
(してないけど)。

4/25/2023, 10:35:32 PM

流れ星を一つ、流してもらえませんか?

流れ星屋に注文が入った。
注文した人にしか見えない星を、夜空に流すのが「流れ星屋」の仕事。

「わざわざお金を払って、願いをかけることって変じゃない? そのお金で願いを叶えればいいのに」

流れ星屋の子どもは、父親にそう言った。

「そのお金で夢を見たいんじゃないかな」

子どもが首を傾げたとき、流れ星が一つ流れた。
願いはないけど、とにかく綺麗だと、子どもは見惚れた。

4/23/2023, 10:11:30 PM

「今日の心模様です」

天気予報のコーナーで、キャスターが言った。関東地方、日中はよく晴れますが、夜は雨となるでしょう。と何事もなく続けたので聞き間違いだと思った。

今日のデートで振られて、夜には泣きはらしていることを、このときはまだ知らない。

4/18/2023, 12:34:01 PM

待ち合わせの本屋さんで、ぬり絵のページを眺めている彼女を見つけた。

「ぬり絵、好きなの?」

気が付いた彼女が振り向いて、「懐かしいなって思って」と答えた。

「ぬり絵が懐かしいの?」

「そうじゃなくて、わたし、こういうふうに見えていたから。世界が。何色も付いてなかったの」

今は色が付いてるよ、あなたと出会ってからはね。と付け加えたけれど、それはぼくも同じだと、彼女は知っているだろうか。

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