朝起きると、妻は必ず「こんな夢を見た」と言う。
映画のようなその夢の話を毎日聞いているので、サブスクは解約してもいいかな、と最近は思っている。
友人が忘れていったタイムマシーンに乗って、5分前に戻った。
「5分後にこれ忘れていくから、使わせてもらった」
と友人に言うと、
「使い方間違ってない?」
とあきれた顔で笑われた。
夕方のニュースの最後にキャスターが、「今夜は特別な夜です」と言った。
はて? 何か特別なことがある日だったっけ?
検索しても何も出てこない。
はて? はて?
何百年に一度かの天体ショーもなさそうだし、全国が心躍るようなイベントもない。
はて? はて?
といろいろ思いながら眠る時間がきてしまった。
あぁ、結局特別なことはなかったけど、いい日だったなと布団を敷いているとき、あっ、と思う。
いい日だと思ったのって、いつ以来のことだろう。
胸の奥からじわじわと安堵がやってくる。
あぁ、なんて特別な夜なんだろうか。
「君に会いたくて」というドラマが流行っている。最終回はサグラダ・ファミリアが完成する日の予定だそうだ。
生きている間には、君に会えそうもない。
母が残した日記を読んでもよいか、家族会議が開かれる。その日記には鍵が付いてあり、重要なことが書かれているんじゃないかと、残されたわたしたちは思っていた。
会議の結果、読む派4、読まない派1という圧倒的多数で読むことになった。ちなみに読まない派は末っ子のわたしだけだ。わたしだったら、読まれたくない。
しかしマジョリティの力に屈し、父が鍵を開けることとなった。
閉ざされた日記が開かれ、父がパラパラとページをめくる。なんにも書いてないなあとつぶやいて、最後のページをみんなに見せた。
「続きはWEBで」
いまのところ、そのURLをアクセスしたいものは、いない。
わたしを除いて。