yuhi

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9/15/2022, 10:35:02 PM

ここから入っちゃダメだから。

隣の席の君は机に線を引いた。

ちょっとはいいの?

ちょっとはいいよ。

妻となった君は布団を離して言った。

ここから入っちゃダメだから。

ちょっとはいいの?

ちょっとはいいよ。

君の心のラインはいつもぼくをブロックしない。

9/14/2022, 10:44:03 PM

漫画を読んでいたら、さっきまであったコマが次々と消えて、そして新しいコマが浮かび上がった。

あのさー、きみ、おれを死なせようとしてない?

と、主人公が言う。どうやらさっきの「この命が燃え尽きてもいい」というセリフが気に入らないらしい。

きみに言っても仕方ないか、これ描いてるやつだよ。言ってくれない? おれ、生きる気まんまんなんだけどって。燃え尽きるなんて、そんな刹那的な感じちょっと感心しないんだけどって。

ぼくはわかったよと言って、ページを閉じた。

とりあえず編集部に掛け合なきゃな。
ぼくの命が燃え始めた。

9/13/2022, 10:41:31 PM

毎日お昼まで寝ている彼女は、
その日に限っては午前4時に起きる。

ベランダに出て、しんとした空気を吸って、
夜が明けるのを待つ。

誕生日おめでとう

という母の声が彼女には聞こえる。

私が生まれた日の朝だ。
母が母になった日の朝だ。
そして母が亡くなった日の朝だ。

お母さんありがとう

彼女は月明かりを見ている。

9/12/2022, 10:44:16 PM

思春期の娘が惚気けている。
初めて出来た彼氏のことをべた褒めしては、ニヤニヤとしている。

どうやらその彼氏は俺様系であると私は感づく。
だから私の反応は少し薄い。

「ねえ、聞いてる?」

と言いたい娘の気持ちもわかる。
返事を待たずにまた話し始める気持ちもわかる。
恋とはそういうものだから。

「ママも早くいい人見つけなよ」

「そうだね」 

娘も私もたくさん恋をしたらいい。
全部の恋が本気だったことを、懐かしく思えればいい。

9/11/2022, 9:19:40 PM

日めくりカレンダーが落ちている、道端に。

日付けが昨日になっていたので、一枚めくってみると、風景が早送りで回りだした。

雲が流れ、空の色も早送り。
忙しない人波も早送りで通り過ぎる。

夜がきて、朝になって、昼がすぎて、夕暮れ前に。

気が付くとカレンダーは消えていた。

歩き出して見るすべての風景が、ゆっくりとしている。ゆっくりと変わっていくすべてが美しいと思って泣いてしまった。

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