【どうしてこの世界は】
ある星に、世界を守ろうとした英雄が居た
「僕が皆を守ってみせるから、信じて欲しい」
しかし、英雄の仲間達は次々と倒れ
遂には民衆の手によって命を落とす者も現れる
「どうして…」
英雄は問う、何故この危機に人同士で争うのかと
「英雄達は信じられない!彼らは支配欲に駆られ、我々のオアシスを奪い取ろうと目論んでいるのだ!」
そうして、英雄の最後の仲間が倒された時。
星は終わりを告げ、崩壊が始まった
「─────皆を守ってくれ、英雄」
英雄は仲間の遺言を思い出し、逃げ惑う民衆を見て嘲笑した
「どうして、この世界は───」
一度も曇らなかった英雄の瞳は、失望の色で染まっている。
英雄はどうすれば良かったのだろうか。
仲間を殺した世界を見捨てて、共に滅ぶのか
仲間の遺言に従って、最後まで世界を守るのか
どちらにせよ、英雄の瞳はもう、あの頃の輝きを取り戻せないだろう。
轟く雷鳴の中で
ただ、雨だけが
私に優しくしてくれた
───道を、間違えたんだ。
君を、王様にする為に。
ただ君だけを愛して
ただ君だけのためにやり直し
ただ君だけの為に人を殺して
ただ君だけの為に英雄を討ち
ただ君だけの為に国を滅ぼした
この物語は、そんな俺を君が討伐する事で完成する。
「───どうして?」
俺を見て揺れる君の瞳は、とても美しい色をしていた。
「───愛してる」
ただ君だけの為に生きた俺は
ただ君だけの手で人生を終えた
確かに僕は
「どんなに離れていてもいつか君に会いにいく」
と約束したけれど
どれだけお金を稼いでも、
どれだけ時間を費やしても、
どれだけ手を伸ばしても、
どれだけ君を愛していても、
届かない場所に、行ってしまった
君は卑怯だ
こんな形で、僕に約束を破らせるなんて
────これは叙事詩の始まりに過ぎない。
誰も知らない、隠された星に
とある英雄が1人。
救世主と謳われ、崇められ、特には疎まれる。
共に戦う仲間達の命を背負い
彼は1人進み続ける。
その道には黄金の血が流れ
神の一瞥を得ようとも、先は見えない暗闇。
それでも彼は、独り進み続けるのだ
そうするしか、ないのだ。
あの日の自分への、贖罪の為に。