ビルの屋上で、前を向く。星の声が聴こえてしまいそうな、夜明け前だった。
きっと、間近で見れば首が痛くなりそうなくらいに高い高いビル達が、今は小さな影となって景色の一部に溶け込んでいた。
薄らと色づき始めていく空には、白い星が未だに瞬いていて。全てを包み込むような淡い光の月と、そんな星々と。黒、青、白、橙、赤……と続く、人類にはあまりにも広大すぎる空の中で。
私は、今日死のうと決めた。
世界の誰かは、こんな私を「馬鹿だ」と罵るだろう。分かっている。私だってそう思う。
だけど、仕方なかったんだ。
どうしても、上手く生きられない。
どうしたって、上手く息ができない。
誰に何を言われても、何をして過ごしていても、「苦しい」という思いから逃れられなかった。もう我慢したくない、とも思った。
友達ができた。
上司ができた。
先輩ができた。
後輩ができた。
親友もできた。
恋人もできた。
大切だと思えること。大切だと思える人は、たくさんできた。その中で、ずっと自分だけが大切にできなかった。
だから最期くらいは、自分を大切にしたくて。
私が何もかもを忘れて、頭も心も空っぽにして、眼前に広がる「綺麗」で私の全てが埋め尽くされる。
そんな時間で、さよならを。
#夜明け前
本気の恋、って
___なんなのか?
相手のことが好きで好きで堪らないこと?
苦しくなって、辛くなって、泣いてばっかりで。
それなのに、一緒に居る選択をすること?
本気で恋したことなんて、私の人生であっただろうか。
好きになったことがない。告白されたら、なんとなく付き合った。私の空白を埋めてもらおうとした。とりあえず、隣に居てみた。望まれるまま、身体も差し出してみた。
そして、埋まらなかった。空白は、空白のままだった。好きになることもなかった。相手のほんの些細なことに……そう、私に対して不満を一言でも溢した瞬間に、私は相手がどうでもよくなった。
じゃあ、別れましょう。と別れることの繰り返し。
そんな私が、本気の恋なんて、冗談でもできるものか。こんな私が、本気の恋なんて、一生かけてもできるものか。
他人に縋り続けるだけの私に、人を愛することなど不可能に違いない。
だから、
たった1人からの告白を待ち焦がれてるだなんて、
きっと勘違いに違いない。
#本気の恋