「ずっと、一緒に居ようね」
そんな言葉が嘘なのは
遠い昔から知ってた
分かっていた筈なのにな
貴女と出会ったのは
学校のグループ決めだった
「グループに入ってもいい?」
そういえば
出会った頃から
貴女は不思議な人だった
誰も貴女に嘘はつけないし
拒めなかった
まるで決まっていたかの様に
貴女は、グループに入ってきた
私達の関係が変わったのも
そこからだ
私は狂信者でも
盲信者でも
なんでもなかった
ただ
人を嫌っていただけ
だからこそ
貴女は毒だった
貴女が言えば
神は居るし
世界は終わるんだ
そんな気がした
だから
「私ね。○○君と結婚するの」
信じられなかった
周りは単純だったから
皆、口々におめでとうと言った
私は、
黙って彼女を見ていた
彼女は、
私達には見せた事のない
美しい笑顔をしていた
神が地に落ちたのだ
狂った狂信者達の末路が
今なら分かる
こんなの神じゃない
こんなの
私が知っている彼女じゃない
披露宴で
笑った彼女を見て
LINEで
妊娠報告をする彼女を見て
カフェで
子供を連れた彼女を見て
なんか違う
狂った心が嘲笑った
子猫
赤ちゃんと猫は
似ているらしい
どちらも
愛される為の造形をしているとか
幼児図式と言って
育児、保護の行動を促すらしい
猫って不思議
猫はニャーと
鳴いているが
実は、
「ニャー」と鳴くのは
赤ちゃんの泣き声を
真似したかららしい
つまりは
「ニャー」は「オギャー」と似た意味
成猫になっても
子猫の様に鳴けるのか
猫って凄い
人間は
大人になると
良し悪しが出るのに
猫は永遠に
子供の侭なんだな
だから
ママに好かれるのか
秋風(しゅうふう)
君を季節に例えるなら
間違いなく秋だ
小春日和の暖かい日に
君を見て思った
………
初めは冬だった
君は、冷たい目をしていて
私を見てはくれなかった
氷のような
ガラスの瞳が
陰では、いつも結露していた
次は夏だった
君は情熱的な人だった
夢を追いかけて
全ての力を使っていた
文字通り、全身全霊で
君の髪の毛の一つからも
強い熱波を感じた
それから、春だった
君はそよ風だった
蝶を羽ばたかせ
子供の背を押した
君は朝日を見て
幸せそうに笑っていた
私にとって、暖かい存在だった
いつかの秋の日
君が笑って
誰かに手を振った
秋風が吹いて
寒くなった
秋風(あきかぜ)
また会いましょう
処刑場へ登る合図
カラン
水滴が滴るグラス
氷の音
水の中に静かに沈む氷
泥沼に沈んでいくようだ
…見苦しい
そうなのだろうか?
問いは空間に飽和した
君が手にグラスを持つ
水滴と手汗
「飲まないの?」
このセリフ、何だっけ?
…あれだ!
美しい悪役の女性の…
何かの映画のワンシーンの…
何処かのバーで、主人公に
酒を勧めてた時のセリフ
色っぽくて
つい、見惚れちゃう様な
そんな演技
私も、出来てるかな?
しばしの無言の後、
「ありがとう」
君からのセリフ
これは、予想外だ
生憎、アドリブは苦手なんだ
上手く返せない
してやったり、と
笑う君は、昔と同じ笑顔
私は君の演技に
不覚にも、見惚れた
見惚れてしまった
だから、挨拶を返せず
君は死んだ
………
また会いましょう
この街の可笑しな伝統
毎年、一人を生贄にして
街の幸福を祈るマツリ
生贄に選ばれた僕は
死ぬ為にここに居る
小さな個室
机に置かれたグラス
そこには、即効性の毒が入っている
ただ、それは
普通なら、知らされない情報だ
僕達はマツリを"進める側"の人間だったから
いつも、彼女は言う
「安心してください。
神様は、貴方を待っているんです。
落ち着いて、水でも飲んで下さい」
氷を入れたのは、当て付けか?
…本当に、笑えるよ
君にも僕にも
だから、僕から言ってやる
「ありがとう」
そして
「"また"会いましょう」
スリルを感じるもの
そんなものについて
考えてみた
ジェットコースター
アクション映画
お化け屋敷
生憎、私は
そういうものを避けて生きてきた
要するに、
スリルとは無縁の人生なのだ
これからも
そうだと思う
スリルという言葉は
恐怖というイメージから
私の中では
『避けるべきもの』
という印象になっていた
調べてみると
極度の期待からくる緊張感のことも
指すらしい
そういうものならあるかも
と思って
記憶の中を探っていた