彼女は、コーヒーが苦手だ
ココアなどの甘い飲み物を好むが、
ごく稀に
紅茶を飲んでいる時がある
砂糖をこれでもかと入れて
甘々になった紅茶を
一気飲みしている
ソレで
本当に味が分かるのか
いささか疑問ではあるが、
コレが
彼女のマイルールだ
彼女の気分だろうが
紅茶を飲む日は多くないし
僕も特段、
紅茶が好きって訳じゃないが、
そんな日は
紅茶の匂いに誘われて
ついつい
彼女とお菓子を食べ過ぎて仕舞うのだ
………
そう言えば
冷めた紅茶は
苦いと聞くが
彼女は、猫舌だからと
いつも冷たくなるまで冷ましていた
砂糖を足して飲んで…
何か意味があったのだろうか?
愛とは何なのだろうか?
考えてみても分からないし
調べてみてもふわっとしている
誰かを守りたいって事
誰かと一緒にいたいって事
誰かを慈しみたいって事
なんとなく
私には縁のない物のように
思ってしまった
そんな『愛』に
言葉があったなら
好きという
なんだか
確証のない言葉じゃなくて
もっと
私を
心から愛してるって分かる
言葉が欲しかった
愛言葉
全然関係ない蛇足
数分前まで雨が降っていたからか
外は、雨の匂いがした
何となく
寒くて
貴方が入れてくれたココアを
自分で作った
材料は同じなのに
違う物に見えて
口も付けずに
キッチンに置いてきた
言葉は無くても
ソレで伝わっていたはずなのに
いつの間にか無くなったココアは
冷めた心の象徴だった
とある取材の一幕
貴方はあの人の友人なんですよね…!
熱くなる記者の声
記者は、とある一大ニュースの取材の為
あの人の友人である彼女を訪ねた
そこで答えた彼女の言葉は
こんな気の抜けた言葉だった
友達だったのかしら…?
………
私、思い出したの
少しだけ、昔話をしましょうか
私とあの人、
あぁ…あの人
今有名な、作家のあの人
友人ではあったの
でもね、あの人
おかしい人だったから
私が嫌われない為に
あの人、私から距離取ってて
私、あの人と話した記憶
あんまりないのよ
そんな私に取材が来るのは
何故だか
悲しいわ
私にしか、あの人
ちゃんと話をしていなかったのね…
私、ちゃんと向き合うべきだったわ
あの人に…
まぁ…
もう遅いですけど…
………
特大ニュース
某有名作家自殺?
その謎を追う為、友人Aに取材…!
色んな憶説が飛び交う
そんな街の中に
貴方はいる
友達なんて其処には居ない
友達
言葉に出来ない事も
きっとある
衝撃と沈黙
なんだか
当たり前のような錯覚
………
幸せな光景を見ていた
彼が誰かと話している
…良かった
彼は孤独じゃない
彼の周りには
人が増えた
本当に、たくさん
彼は毎日
とても楽しそうだった
毎日、毎日
私よりも
ずっと大変なのに
…なんだか寂しくなった
………
卒業式
彼は笑うんだろうか
笑っているな
きっと
私は泣いているだろうか
何も無い
何も出来ない
そうかもな
きっと
行かないで
幸せとは
何だっただろうか?
僕は、彼女が今、居たい所に
居られるように願う
青い絵の具だけで描かれた
拙い絵
海と…
空?
よく分からない
幼い頃に描いた絵だろう
どう見ても、幼稚な絵だ
タイトルは
『うみ』
初めて海に行った日のこと
…だっけ?
………
そうだ…!
あの日だ
私が初めて海の冷たさを知った日
海に飛び込んだ日
貴方の手が掠めて
貴方の手の暖かさを思い出して
握りたかったなぁ
なんて
叶わないけど…
広い、広い
大きな空の下で考える
海に戻れたら
貴方の手を握れるだろうか?
今は、空しかないけど…
どこまでも続く青い空