あの歌?
そう、あの歌
あの海?
あの海がね…
あの空?
うん あの空だよ
君が忘れた思い出
今は価値の無い思い出
………
ほぼゼロらしい
君が、私達を思い出す確率
でも、言ってたよね、君
「例え、この夢が叶う確率がゼロだとしても…夢に向かいたい。みんなと進みたい!」
そんな言葉に
今は価値が無いけど
いつか
価値があったって言える日まで
…頑張れるかなぁ?
…無理だ
だって…みんな
…いなくなった
…いやだ!
ぜんぶ、いやだ!
………
僕が記憶を失っていた間に
色んなことがあったらしい
妹から聞いたことだ
あの日
…僕たちが事故に遭った日
僕とアイツを庇ったアイツとアイツ
…死んでしまったらしい
もう一人、
残されたアイツ
…精神に異常を来たして、病院送りだとか
医者からは
君と同じで事故を忘れようとした
記憶を無くしたかと思えば
思い出して暴れ出す
…僕と同じか。
そうだな
僕たち、そっくりだったもんな
好きな物も
好きな映画も
好きな言葉も
好きな奴らも
同じぐらい苦しいよなぁ
今も薬が手放せないけど
事故の記憶は
すっぽり抜けてる
多分、かなりの思い出も
アイツは…
忘れたくても忘れられない
トン
久しぶりに外に出て
踏み出した
始めの一歩
風が気持ち良くて
なんだかいい気分になる
嫌なこと、嫌いなこと
ばっかりだったけどなぁ
………
深夜から歩いていたら
すっかりテンションが
おかしくなってしまった
明日から、
少しだけ 頑張れそうだ
旅行にも行きたいな
…もうすぐ日の出だ
一体、
何時間歩いていたのだろうか
なんだか面白くなる
街が光を取り戻す
薄く照り出した光は
私を祝福していた
やわらかな光
「ずっと待っている君」
とある画家がいた
彼女は、正に天才だった
彼女の描いた作品は
飛ぶ鳥を落とす勢いで値上がりし
あらゆる人が
彼女の作品を欲しがった
彼女の作品は
『花』だった
人の形をした花だった
独特な形の華
美しい花畑だ
懐かしい思い出のようだ
だが
恐ろしく怒っている
僕はその作品に
目を奪われた
彼女の姿を見た人は誰もいない
そんな話を聞いて
ヒントなんて無くて
いるわけも無いのに
彼女を探して街を歩いた
街のとある雑貨屋
そこに居た
少女とふと、目が合った
少女も僕もビックリして
時間が止まったように感じた
彼女から向けられた眼は…
鋭い眼差し
ピシッ
小さな手が
空に向かう
広くて大きな空に向かう
何してるの?
とどかないの
何に?
おそら
そっか
私も負けじと手を伸ばす
ずるい
?
おねえちゃんのほうが
たかいもの
…じゃあ
抱っこしようか?
やだ
そんな事を言っていた
十数年前の夏
今の君は…
何してるの?
何やら机で作業している
ん?
勉強だよ
…頑張ってね
うん
私よりも高いところを
ずっと高いところを見て
努力し続けている
頑張ってね
私よりも
高く高く
きらり
輝く笑顔のあの子たち
教え子たちに手を振られ
笑顔で返す
私は、上手く出来ているだろうか
子供はどうにも苦手だ
一向に好きになれない
教え子たちもそうなのかと聞かれたら
…それはノーコメントだ
僕は、子供が好きだ
でも
彼女は嫌いらしい
何でも信じるから
何でも受け入れるから
と
確かにそうだ
でも
見方を変えると どうだろう
素直だし 純粋だ
そんな事を言ったって
彼女は子供だった、自分が嫌いなんだ
知っているけど
もう少しだけ
意地を張らないで
子供の事を好きになって欲しい
僕は教師になるから
君にも仲良くして欲しいんだ
子供と触れ合う喜びを知って欲しいんだ
なんて…今は…
君と
もっと素直に
仲良くしたかった
子供のように