「ずっと待っている君」
とある画家がいた
彼女は、正に天才だった
彼女の描いた作品は
飛ぶ鳥を落とす勢いで値上がりし
あらゆる人が
彼女の作品を欲しがった
彼女の作品は
『花』だった
人の形をした花だった
独特な形の華
美しい花畑だ
懐かしい思い出のようだ
だが
恐ろしく怒っている
僕はその作品に
目を奪われた
彼女の姿を見た人は誰もいない
そんな話を聞いて
ヒントなんて無くて
いるわけも無いのに
彼女を探して街を歩いた
街のとある雑貨屋
そこに居た
少女とふと、目が合った
少女も僕もビックリして
時間が止まったように感じた
彼女から向けられた眼は…
鋭い眼差し
ピシッ
小さな手が
空に向かう
広くて大きな空に向かう
何してるの?
とどかないの
何に?
おそら
そっか
私も負けじと手を伸ばす
ずるい
?
おねえちゃんのほうが
たかいもの
…じゃあ
抱っこしようか?
やだ
そんな事を言っていた
十数年前の夏
今の君は…
何してるの?
何やら机で作業している
ん?
勉強だよ
…頑張ってね
うん
私よりも高いところを
ずっと高いところを見て
努力し続けている
頑張ってね
私よりも
高く高く
きらり
輝く笑顔のあの子たち
教え子たちに手を振られ
笑顔で返す
私は、上手く出来ているだろうか
子供はどうにも苦手だ
一向に好きになれない
教え子たちもそうなのかと聞かれたら
…それはノーコメントだ
僕は、子供が好きだ
でも
彼女は嫌いらしい
何でも信じるから
何でも受け入れるから
と
確かにそうだ
でも
見方を変えると どうだろう
素直だし 純粋だ
そんな事を言ったって
彼女は子供だった、自分が嫌いなんだ
知っているけど
もう少しだけ
意地を張らないで
子供の事を好きになって欲しい
僕は教師になるから
君にも仲良くして欲しいんだ
子供と触れ合う喜びを知って欲しいんだ
なんて…今は…
君と
もっと素直に
仲良くしたかった
子供のように
ぽつり
教室の角
不自然なグループの言葉
夕暮れに零された言葉
聞いていたのか いなかったのか
思い出せないから
分からない
あの子の告白
あの子の罪
わたしはあの子が嫌いだった
初めて嫌いになれた人だった
あの子も同じ人間なんだなぁって
知っちゃって
なんだか気まずくなって
何か言って
走って、帰ってきたんだっけ
忘れちゃったな
あの子の声も
言葉も
嫌いなところも
放課後
きらり
光が差し込む日曜日
風に背を押され
なびいている物
朝の目覚めに相応しい物だ
熱風が冷風になった
蝉が消えて、虫の鳴き声が軽やかになる
秋の気配を感じる
新しく買ったレースのソレ
透けて
外が少しだけ見える
子供の集まり
なんだか酷く懐かしい
時刻は午前八時
後3時間の休息に
今は浸っていたい
カーテン