「過ぎ去った日々」
額の中、パトランプがくるくると点灯している。
額の骨の内側で、目に入ってくる人物や声の刺激を仕分け、少しでも刺激に触れたら、けたたましく警戒警報が鳴り響く。
ここは戦場か?と思う程、私の神経は研ぎ澄まされ、時に過敏に、時に騒がしく、最悪の想定を弾き出す。
生命の危険すら主張するその警戒音は、その場所に向かうことも辛くした。
なのに、逃げ出すと言う選択肢だけが、私の中で塗り潰されて、壊れていた。
どうにも押せないボタンと、塗り潰された選択肢は、私に退路が無いと錯覚させ、泣きながら前へ進むしか無いと思い込ませた。
気の置けない友人が、教えてくれた。
「もう、逃げな。まずは、そこから離れる。全部の話はそれからだよ。もう充分。やれることは、やったでしょう?その壁は、乗り越えるべき物じゃない。戻っておいで。」
全部、捨てると、決めた。
起こり得ない恐怖を予測する脳のエラーコールと猜疑心の塊の様な思考。
魘される悪夢は、繰り返す日常の思い返し。
しゃっくりみたいに繰り返している内に、少しずつパトランプが点灯する回数が減って行った。
それでも、逃げ切るまでは恐怖を予測する思考が度々顔を出して、怯えていた。
この先を考えては焦り、元には戻れない気がして泣いた。
仕事の話しか出来ない人の連絡先をブロックした。連絡しないと決めた。
気にしないを徹底して、もう振り返らないと。振り返るとしたら、若さだけで駆け抜けた良き思い出として。
過ぎ去りし日々に、お別れを。
わたしは頑張った。
それこそ命懸けで、やり切ったのだ。
際限のない戦場を駆け抜けたのだ。
もう充分、やれることはやったのだ。
わたしが、私らしく居られる場所を、新しく探そう。
歪んで歪なわたしを、これ以上すり減らすことがない場所を。
もう一片たりとも、奪われてなるものか。
「お金より大切なもの」
気の置けない友人。
家族。
自分が生きている事。
空気。
自然。
美味しいご飯。
健康。
身の丈に合った娯楽。
※閲覧注意※
幼馴染シリーズ
【たった1つの希望】
たった1つの希望が叶うとしたら。
あなたは何を願うのだろう。
『あなたの幸せを傍で見守ること。』
「あなたと一緒に幸せになること。」
目的は同じ。
少しだけ過程が違うのは、互いへの想いと考え方の違い。
『あなたが幸せなら、自分は傍観者で良い。』
「あなたと自分は一緒に居て、喧嘩するほど仲良く過ごしていたい。」
間にあるのは、2人だけの紆余曲折。
時折、盛大なすれ違いを起こしては、仲直りする様に。
「枯葉」
落葉樹から落ちる乾燥した葉っぱ。
集めて腐葉土にする人がいた。
『良い土にしてくれるんだ。自然ってのは上手くできてる。凄いもんだよ。』
朗らかに笑う少年の様なおじいちゃんは、何でもその手で作り出してきた人だった。
(理科の授業でやった生態系だ!)
何だか、課外授業を今やっているみたいで、楽しかった記憶がある。
『何でも興味を示してくれる、あんたさんみたいな人が居ると、こっちも張り合いが出て楽しいよ。』
色んな事を教わった。関係のないことまで。
それは、わたしの糧になるし、同じ様に興味を示す誰かに伝えても良いかもしれない。
枯葉が、風にふわりと舞う。
私はいつも、その人を思い出す。
「今日にさよなら」
今日が良い日だとしても、
今日が悪い日だとしても、
今日は今日。
身体を温めて、夜が来たらゆっくり休む。
次に太陽が登ったら、今日は過ぎ去って、明日がやってくる。
今日の日に、さよならを。
ありがとうと感謝を添えて。
今日はお疲れ様。
また明日、よろしくね。
わたしは、私と今日を、明日を歩いていく。
だから、今日にさよならをするのだ。