これからは 二度と交わることのない道を
思い出を一つずつ 落としながら歩いていく
あなたが一番最初に落とすもの
私が最後まで持っているもの
それが同じだとわかったから
私たち岐路に立って 別の道を選んだ
#岐路
【明日世界が終わる夜】
明日世界が終わるんだ
老人も赤ん坊も
偉い人もそうじゃない人も
皆最初からいなかったみたいに
消えてなくなってしまうんだそうだ
街はてんやわんやだ
明日になれば罪は罪じゃなくなると知って
好き放題に
いつもは檻に閉じ込めていた悪を
大いに駆け回らせている
僕たちはと言えば
普段と変わりなく
明日になれば愛は愛じゃなくなると知っても
君はベッドの上で僕を待っている
僕はそんな君にキスをしている
明日世界が終わるんだ
きっと誰もが
本当に欲しいものに手を伸ばす
目覚めたら世界が終わる夜
伸ばした僕の指先は
君の手に触れた
#世界の終わりに君と
【Close yet far】
あなたの吐いた息が 私の髪を揺らす
あなたの目の中の 私と目が合う
そうしていつも側にいるのに
どうしてわからなくなっていくの?
近づけば近づくほど
心だけが遠く離れていく
あなたの右手が 私の左手を包む
あなたの肩に 私の涙が滲む
狭い部屋で寄り添っていても
広い砂漠で何かを探しているみたい
あなたの全てに触れていても
心だけが見つからない
#狭い部屋
【ナイモノネダリの森】
ナイモノネダリの森の中
大きな袋を抱えて
少女は歩いていきました
足元に咲いていた花に こんにちは
「あなたの花びらは素敵ね」
ナイモノネダリの森の中
綺麗な花びらのドレスを袋に詰めて
少女は歩いていきました
背の高い細長い木に こんにちは
「あなたの腕は細くて素敵ね」
ナイモノネダリの森の中
細くて長い枝を袋に詰めて
少女は歩いていきました
優しいおばあさんが こんにちは
『あなたの素敵な笑顔はどうしたの?』
少女は笑顔を探しましたが
たくさん詰め込んだ袋は大きく大きく膨らんで
なかなか見つけることができません
「私の笑顔はどこに行ったの?」
綺麗な花びらのドレスの下に
細くて長い枝の下に
少女の笑顔がありました
ナイモノネダリの森の中
笑顔を一つ袋に詰めて
少女は帰っていきました
森の入り口を潜った時と同じ姿で
【あなたの知らない花】
遠くの街へ行こう
一人きりになれる街
あなたが歩くことのない街へ
この想いがいつか枯れてしまうと言うなら
この涙がいつか乾いてしまうと言うなら
今はまだ私この種に ただ水を注いでいたいの
どんなに美しく色づいても
どんなに醜い実をつけても
あなたはこの花の名前を
どうか知らないままでいて
遠くの街へ行こう
二度と戻れない街
あなたのいない街へ