決してそうではないのに、いつまでも生きる気がする。いつまでも健康で、美味しいものを食べて、大切な人と一緒に笑っていられると思う、
決してそうではないのに。
ガラスの雨はわたしを突き刺し血に変える、地面にひろがるわたしは運ばれ、川になる、目覚ましが鳴るまでは未成形でもいいでしょう、と、つぎはぎの毛布がわたしを眠らせ、抱きしめる、雨は永遠ではない、わたしが永遠でないのと同じように、すぐに晴れるよ、向こうの空が青いから。

通り雨

ここはふるさとじゃないみたいで良かったです。景色たちは、私を受け入れない。ああご愁傷様でした、お前はここで生きていけない、灯籠を流す川が汚染されました、美しい川でしたが、今はもう見る影もない、でもお前には夢を見せてあげる、だからよくお眠り、ここはふるさとじゃないから、きっと忘れ去るから、きっと失うから、今は綺麗なままの夢を見せてあげるよ。

窓から見える景色

おまえをぶっ殺せたらおれはどんなにか幸せだろう、おれはね、おまえに出会えて本当に良かったと思っていて、おまえは夏だ、命だ、光だ、苦しみを共有したことがあるなんてことは、なんの理由にもならない、おまえがおれの人生の美点になるなんて最悪だ、おまえがおれに傾倒しないのは許せない、怖いから、名前はつけたくない、怪物は怪物のままでいてほしい、おれもおまえも、人間に成り下がったなんて気づきたくなかったな、

形の無いもの

大人になると、かなしいことが多くて絶望する。大人になりたいと思ったことはないけど、多分小学生の私は思ったことがある、昨日は生きたかったけど今日は死にたい、そもそも生きたかったことなんてあったっけ、そんでまた朝が来たら死にたかったことなんて信じられない、身軽な、小さな穴をくぐり抜けられるだけの身体は失いました、筋肉が衰え、肌がたるむ、何が入ってるか分からない薬に賭けることにして、生き延びる、グラウンドは今見たら狭いのだろうか、てっぺんから見た夕陽の形は今日も同じだ、あのときUFOが見えたっけね。

ジャングルジム

声が聞こえる

あなたはいなくなってしまったのだから

コーヒーをスプーンでかき混ぜることもないのだから
読みかけの本に猫の栞を挟むこともないのだから
旧友の知らせにペンを走らせることもないのだから
ガスコンロに火をつけることもないのだから
休みの日にカーテンを開けることもないのだから
ひなたぼっこの最中にうたたねすることもないのだから

誕生日に贈った花が枯れて悲しむことも
味噌汁を美味しそうに飲むことも
金曜日に意味もなく夜更かしすることも
いつも同じことで大笑いすることも

もはやないのだから

あなたに言われるまでもなく
いい加減にしようと思う

あなたはもう、いなくなってしまったのだから。