真夏の記憶
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
高校1年生。夏休み。誰もが浮かれるこの季節。
もちろん俺も浮かれていた。
高校生なってからの初めての夏。妙にキラキラとしていて、隣に座る幼なじみでさえもキラキラと見えた。
幼なじみの女の子。こいつに恋愛感情なんて持たずに生きてきた。それなのにこんなにキラキラと見えるのは何故だろう。
俺たちは今、絶賛夏休みの宿題中。俺の家で宿題をしている。生憎俺は頭が悪い。だから毎年こいつに教えて貰っているのだ。
キラキラと見えるこいつの横顔。
不意に目が合いドキッとする。今までこんな事なかったのに。
...なぁ、男女の友情って成立すると思う?
思わず口に出してしまったこの言葉。
彼女は少し目を見開いて、それからニッコリと微笑んでみせた。
成立するって思ってたんだけどなぁ…
俺にぐっと近づいてきて、見上げて笑う。
ねぇ、私たち、お互いいつからこんな感情を持っちゃったのかな?
知らないよ。俺だって男女の友情は成立するって思いきっていたのに。
夏のせいって事にしよ。
それがいい。こんなの全て夏のせいだ。
---------------------------
こんな事もあったな…なんて、昔の記憶を思い出す俺。
懐かしいな。
そう言って、俺は病室で寝たきりになった彼女の頭を優しく撫でた。
あの真夏の記憶を懐かしむように。
こぼれたアイスクリーム
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
はい、半分。
姉はいつも半分くれる。今日はアイスを半分こ。
ぱくっ。
美味しい...!
「ありがとう」は気恥ずかしくてなかなか言えない。
だからいつも「美味しい」で誤魔化す。
私と姉はいつも一緒。出掛ける時も、遊ぶ時も、寝る時も。それなのに、最近は一緒の時間が減っている。
どこ行くの?
「遊びに行くの。」
誰と?
「ひみつ。」
ひみつかぁ…。
何だか少しだけ寂しい。
ずっと私と一緒に遊んでいればいいのに。
そしたらきっと、私は幸せ。
ポタポタとこぼれるアイスクリーム。
いつもは半分のアイスクリーム。
このままお姉ちゃんは遠くに行っちゃうのかな?
私の知らないお姉ちゃんになっちゃうの?
時間が経って、溶けてこぼれるアイスクリーム。
こぼれたアイスクリームを見て思う。
まだ遠くには行かないで。
次にポタポタとこぼれたのは、
アイスじゃなくて私の涙。
やさしさなんて
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
優しさなんて向けないで。
そう思うのは、きっと俺が君と親友だから。
親友で幼なじみの君。俺と同じ男の子。
ただの親友。ただの友情。なのに何でこんなに苦しまなきゃいけないんだ。
俺は昔からこいつの事を知っている。しかし、いきなり現れた女がこいつを奪っていった。当たり前だ。こいつは優しい。
俺に見せたことのない顔を見せる君。俺には見せられなかったその表情。今日も彼女に向けてるのか?
君は俺にも優しい。優しいからこそ辛くなる。
今日もいつも通り親友の俺たち。けれど前より少し遠くて、ほんの少しだけ距離がある。
君は優しく俺に言う。
久しぶりに遊びに行かない?
俺に向けてくれる優しさ。親友としての優しさ。
彼女には向けない優しさ。
けれどもきっと、彼女にはそれ以上の優しさをいつも与えているだろう。
やさしさなんてさ、
もう俺にもじゃなくて、彼女に全部あげちまえよ。
そしたらきっと、俺の苦しさは消えていく。