あの人、好きじゃない。
むしろ、嫌い。
…だったんだけどさ、
このまえ、偶然ショッピングモールで見かけてね、迷子らしき男の子をサービスカウンターに連れて行ってたんだよ。
向こうは私に気づいてなかったんだけど。
あの人さ、いっつもムスッとしてて、乱暴なとこもあって、怖いし嫌だったんだけど、なんかすっごく優しい顔して男の子に話しかけてたんだよね。
びっくりしたー。
あの人とは習い事が一緒なんだけどね、クラスの仲間といるときは、あんまり笑わないからさ、あんなやわらかい表情するんだなー、って。
しかも、人に親切にするタイプに見えないし、ましてや子ども苦手そうに見えたし。
人は見かけによらないって、まさに!、だよね。
…とはいえ、
やっぱりクラスにいるときは必要以上に話さないし、無愛想なんだよ。
やっぱり、
あの人のこと好きじゃないなー。
…でもさ、
好きじゃないのに、
最近ちょっぴりだけ、
気になるかもしれないなぁ…
「…ところにより雨、でしょう。」
お気に入りのキャスターが出る天気予報をチェックして身支度を始める。
ボクのいつものパターンだ。
しかし、外は快晴。
ホントに雨、降るのかな…
と、首をかしげつつ、折りたたみ傘をしっかり鞄に入れるボク。(お気に入りのキャスターのいうことは信じるのだ。)
でもさ、『ところにより雨』って、いい言い回しだな。なんとなーく曖昧で、もし雨が降らなかったら、「あ、ところ、ではなかったんだなー。」と納得できる、というか……
そんなくだらないことで頭を巡らせていたら、外は曇り空になっていた。
あれ?それほど時間は経ってないと思うんだけどなあ。
出かける頃には、ぽつりぽつり、と雨が降ってきて、
「ああ、ここは、″ところ″だったんだなー。」と、またくだらないことを考えつつ折りたたみ傘を鞄から出し、玄関の傘を手に取ちって、ボクはドアを開けた。
あゆむくんは、おえかきがすき。
いっちゃんは、うたがすき。
しんやさんは、動物を描くのが上手い。
てるみさんは、高い声で歌うのが素敵。
るうさんの煮物は、本当に美味しい。
よしこさんの焼くパンは、とにかく最高!
誰もが必ず得意なことがある。
それは、何かをつくりだしたり、育てたりするだけでなく、″たただいるだけで落ちつく″なんていうのもある、とボクは思うんだ。
人も自然もみーんな、
誰もが特別な存在、なんだよね。
「ホント、バカみたい。」
が、口癖のボクの彼女は、とても頭の回転が早い。何をやらせてもそつなくこなしてしまうので、いろんな事を任される。
実は本当は不器用なので、彼女の見えないところの頑張りは、相当なものだ。
いつもすました顔でいるから、彼女の陰の努力を周りは知らない。
知っているのは、ボクだけ。
だから、いっつも愚痴を聞かされる。
「ホント、バカみたい。」
と。
そんな、彼女が急に姿を消したのは1週間前。予兆なく、跡形もなく、彼女はいなくなった。
みんな何故彼女が消えたのか分からない。分かるのは、ボクだけ。
彼女は、もう、限界だったんだよ。
「ホント、バカみたい、だ。もっと自分を大切にしてたら良かったのに…」
ボクは、彼女が今、自分のために生きはじめていることを願いながら、空を見上げた。
二人なのに 寂しいね
一緒にいるのに 寂しいよ
一人じゃないのに 一人ぼっちみたい
二人ぼっち とでも 名付けようか
きみは いつも
どこを みてるの?
ぼくは いつも
きみを みているのに