熱湯わかしてたまごをポチャン
スマートウォッチでタイマー設定
固茹でだから10分後
眠るまで
プレイリストのオフ設定
1時間で寝てるかな
駅で気付いた忘れ物
スマートウォッチで時間を戻す
家にいたのは10分前
スマートウォッチの新機能
10分だけ過去に戻れるリワインド
忘れ物も失言も事故も激減
便利だな
後悔って言葉も減ってきたかも
「もしもタイムマシンがあったなら」
#469
「かわいいお嬢さんね!お名前は?」
返事を聞いて みな目をパチクリ
ポケモン好きのあの子は元気に
「おれ、サトシ!!」そう言って
笑って駈けてくんだ
ほんとにポケモンと走ってそうだったよ
「私の名前」
#468
ポツ… 何かが頬で弾けた
?
道ゆく人が空を見上げる
視線の先に黒い雲
アスファルトに
たちまち広がる水玉もよう
雨のにおい
ヒュッと吹きぬける強い風
駅まであとちょっと
開きはじめる傘の間を抜け 走る
「視線の先には」
#467
あっ!まただ
集合写真で私だけ目を瞑ってる
気をつけて目を見開くけど
耐えられず瞬きしたときにパチリ
あるときの家族写真
「お願い、みんなで目を瞑って!」
家族揃って目を閉じて写る
見れば笑顔になる一枚
「私だけ」
#466
「なんで蚊取り線香で蚊が落ちるか、知ってるか?」「ううん、どうしてなの?」
「蚊はな、赤ちゃんのころからお母さんに『あの渦巻き🌀を見てしまったらもう命はないの』って教えられて育つからなんだ」「ええっ」
胡散臭いにもほどがある話を鵜呑みにしていた
「そのおもちゃ、分解してかっこよくしてやるから貸してみろ」「分解…?ちゃんと直してくれる…?」「当たり前だ、ホラ!」
わたしのお人形用の素敵な自転車はそれきりバラバラのままになった
何かと騙されたり泣かされたりしたけど、それでも好きだったお兄ちゃん
ある日の幼稚園の帰り道「おーい!」と呼ぶ声の方を見ると、見慣れない長い電車のようなものの先頭にお兄ちゃんが立って意気揚々と手を振っている
三輪車の後ろに荷車、スケートボードに
足蹴り乗用消防車、ハリボテ戦車、あれこれロープで繋げたうえに風船も三つ四つふわふわ付けた豪華で奇天烈な、わたしのお迎え用特別車輌
三輪車をこぐお兄ちゃん 消防車を蹴立てるわたし たくさんの友達の驚いた羨ましそうな顔
家までの短い距離が、誇らしさで胸いっぱいのパレードになった
もう聞けなくなっちゃったけど お兄ちゃんの記憶の中の幼いわたしはどんなだったろう
同じくらいあったかくて面白い、なつかしい思い出だったらいいな
「遠い日の記憶」
#465