勿忘草の青がすき
滲んだような優しい青
つぼみのピンクが青く咲く
すぅっと伸びて
ぽぽぽぽ、と咲く
はにかみ屋のかわいい子
「勿忘草(わすれなぐさ)」
#320
ブランコをこぐことができない。
街の公園にある、普通のあのブランコだ。
膝を伸ばして前に揺れ、膝を曲げて後ろに退がる。みんながやってるのを見ればやり方はわかるけど、同じにやろうとしてもうまくいかない。鎖につかまり、お尻を台座に押し付け、えいっと膝を伸ばす。
びよょん。動かない。
曲げ伸ばしのタイミングが、とにかく悪いのだろう。
どうしてみんな、特に何も考えるでもなく自在に操れるんだ?タイミングを考えれば考えるほど身体がこわばって鎖がガチャガチャ音を立てるだけだ。
ブランコがこげない奴なんか他にいない。ブランコなんてつまんないよと嘯いて、ボールを蹴ったり木にぶら下がったりして遊ぶのが常だけど、ブランコが目に入れば心がざわつく。
公園に誰もいない時に1人で練習することがある。誰もいない公園で1人ブランコをこぐ(こげてない)図はいかにも寂しげだけど、寂しいとかじゃない。必死だ。
ある日同じ年頃の子がやってきて公園の反対側の鉄棒にとりついた。ブランコに座って考え事してるだけという風でチラと見ていると、逆上がりの練習を始める。できてない。
体育の授業でブランコのテストは無い分こっちは気楽かもな、と思いながら足を曲げ伸ばしてはキイキイ金属音を鳴らしていた。
なーーーんでうまく行かないかなぁ、、、
その時突然、ふわぁっと前に大きく揺れた。おおお!
そのまま大きく後ろに揺れる。おおお!
また前に戻る時、誰かが背中を押してまた大きく揺れた。鉄棒の子だ。向こうもこっちを見てたんだな…。繰り返し背中を押してくれて、伸ばす、曲げる、と言う声に従って足を動かす。何かぎこちないけど、揺れが気持ちいい。でも、自力でやろうとするとやっぱりダメだ。
互いに逆上がりのお尻を支えたり、ブランコの背中を押したりする日がしばらくあって。どうしてもお互い自力じゃ出来ないこともわかってきた。でも絶望感とかはなくて、なんだかこのままでもいいじゃん、て気持ちになってる。背中を押してもらえる嬉しさと、お尻を支えてあげる楽しさと、出来ないことも笑える心地よさで気分がいい。
そのうち出来るかもしれないしね!
「ブランコ」
#319
やっと辿り着いたその先に
何が待ちうけていようとも
願ったものが 何も無かったとしても
握りしめていたものが 全てこぼれ落ちても
それでも
いい旅だったと思えるような
日々を 一歩一歩を
「旅路の果てに」
#318
「今月のお家賃が入ってるからしっかり届けてね」お母さんから手渡された封筒を、言われた通りしっかりと握りしめてぼくは家を出た。
家賃だからそれなりのお金が入っているはずで、緊張する。怪しい人影がないか確認して道を横切る。友達が遊んでいる公園も急ぎ足で通り抜ける。車の往来に注意しながら大通りを渡ると、いつものポストだ。投函完了。
「ただいま!」「あら随分早かったのね、大家さんいらした?」「…?」
「あっ!!!」ポストじゃない、大通りの向こうの大家さんの家に届けなきゃいけなかったんだ!
マズイマズイマズイマズイどうしよう!もうポストの中だ泣きたい。
何度も届けに行ったことあったのに、どうして今日に限って郵便物と勘違いしちゃったんだろう。お母さんもはっきり大家さんの家、と言ってくれたらよかったのに…安心して任せすぎだよ嫌な汗が噴き出る。
ぼくはもう一度ポストにダッシュした。郵便局の人が回収に来るとき、事情を話してあの封筒を返してもらうためだ。間に合ってほしい。
待っている間に不安がどんどん募ってくる。事情を話しても、本当にその封筒をぼくが投函したか疑われたら?なにか規則で、投函物を返すことはできないと言われたら?ダメかも…。
どれくらい待ったか、遠くから見慣れた郵便局の車がとうとうやって来た。「こんにちは!」「こんにちは」大きな身体の、いつも小包を届けてくれる女の人だった。
必死に片言の英語で(そう、ここは日本じゃないんだよ必死だよ)事情を説明するとフンフンと頷いて袋の中をかき分けている。「これかな?」
と見せられた封筒には宛名がなく裏にぼくの苗字と住所。
何の問題もなくぼくに手渡し、肩を優しくポンポン叩いてくれた。ほぅっと身体中の力が抜ける。ありがとうありがとうと何度も言って手を振って、そのまま大家さんの家へまた走る。
お届けもの、やっと完了!!大変だった!
「あなたに届けたい」
#317
I love…
これは昨年の今ごろ、
このアプリを始めた最初のお題でした。
広告が出てくる試練を乗り越えて
♡を下さる皆さんには
今も心をあたためて頂いています。
ありがとうございます。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あなたのいたずら描き
鼻歌 口笛
意味不明の寝言
几帳面に折りたたまれた傘
美味しいときの顔
へんなクシャミ
きっと小さな頃からそのまま
「I love…」
#316