「おかあさーーーん!!」
大きな声で、両手をいっぱいに広げ
笑顔で思い切り駆けていく小さな子
屈んで同じ笑顔で手を広げ待つお母さん
テーマパークで一日遊んできたのだろう、
お土産の大きな紙袋を腕に掛けたお父さん
その肩に柔らかな頬を乗せ
安心して全身を預けて眠る子
じぶんを受け入れてくれる愛を、
疑いなく心の底から信頼している姿に
その愛を当たり前に注ぎかけている姿に
街で見かけるそんな風景のひとつひとつが
きらきら輝く、尊い当たり前であることが
とてもしあわせで ありがたい
「私の当たり前」
#160
外から見る昼間の窓は
無表情でよそよそしいのに
夜には同じその窓が
暗い外の街路を照らし人々を安心させる
光のない場所で迷う人に
遠くに灯る街の明かりは救い
闇を恐れる心を光が
人の気配が安らげる
夜に火を絶やさずに身を守ってきた人類は
闇を遠ざけ光を求めることをやめられない
宇宙からも都市のかたちがわかるほどに
「街の明かり」
#159
七夕、星まつり、笹竹の節句。
近隣の商業施設で、笹竹が飾られ短冊に願い事を書くコーナーが設置されている。最近目にしたところでは「今すぐお金が欲しい」「100万円手に入りますように」と世知辛い世の中を痛感…
幼稚園では、笹に折り紙飾り。短冊に書く願い事は「走るのがはやくなりますように」「バレエが上手になりますように」とホッコリする努力目標(そう指導されるのかもしれない)が多くて、もともと技芸上達を願う行事の側面もあることを考えると納得
進学塾に飾られた笹にはもちろん「◯◯学園絶対合格」「第一志望に受かりますように」有名校の名前がずらりと並んでいて思わずこちらも手を合わせて祈る気持ちになる
七夕に思い出すのは、上の子の塾で同様の必勝短冊を見ていた下の娘が私も、と言って「南国のばらが上手にひけますように」と書いたピンクの短冊。習い始めだったピアノのあのメロディーと、懸命に鍵盤に向かっていた幼い娘の姿が甦り、大変だった子育てのなかで流れたトロリと幸せな時間が胸に満ちる
「七夕」
#158
友達の、思い出話を聞くのが好きだ
田舎の野山を駆け巡った話など大好物
珍しく川が凍ったときに歩いて渡ろうとして
割れた穴から冷たい水に落ちた話
得意の木登りで樹上に秘密基地を作ったけど
数日後大人たちに片付けられてしまった話
うどんを餌に堤防で魚を釣りまくった話
採れたてのホタルイカを漁師さんに分けてもらった話
わたしが経験してこなかった話が
まるで異世界の物語のように楽しく
自分の人生の横幅まで
ぐんと広がるような楽しいひととき
「友達の思い出」
#157
天の川もさそり座も
北極星も北斗七星も
伝説みたいなもので
実在しないと思ってた
だって見えたことがなかったから
でも自動販売機もない旅先で
懐中電灯を頼りに闇を歩きながら
見上げた空にそれはあった
何の説明もなくてもわかる
光の川が空を流れている
それではあれが北極星か
カシオペアはあんなに大きかったのか
見えなかったものが急に見えた
脳は激しく活性化して
わたしが、世界が、
バージョンアップ
「星空」
#156