臭い物に蓋をした
憎しみや妬み、呪いも
隙間から滲み出てこないよう
押さえつけて 醗酵させて
いつか何か別の
できれば良いものになれ
わたししか知らない
誰も知らない
でもそれじゃ苦しいんだ
悪い自分をわたしは消せない
だから
神さまには知ってて欲しい
悪いわたしのこと
そしたらちょっと安心できる
「神様だけが知っている」
#155
この道の先にね、
新しいお店ができたんだ
小さなお店でね、
コロッケやさんなんだよ
見に行ってきたんだ
そしたらね、
一個30円て書いてあった
30円だよ、
お小遣いで買えちゃうよ
すごいでしょ
サックサクの揚げたてだって
絶対おいしいよ
ひとつ下さい、って買ってさ
アツアツのをすぐ食べちゃう!
ね、すごいでしょ
だめって言っちゃだめだよ
「この道の先に」
#154
暗く冷たいじめじめした隙間で
動けずじっとしている
何も見えない 誰も訪れない
そんな毎日
ただ この隙間に日に数分間だけ
太陽の光が差し込む
それは突然現れる
圧倒的な光の奔流と熱量
まるで生まれ変われそうな
エネルギーが注ぎ込まれる
ひとときの
この恩寵なしに生きていけるものか
「日差し」
#153
産院の新生児室
並んでいる赤ちゃんたちが窓越しに見える
お産ラッシュだったのか、15人くらいの小さな赤ちゃんたちがスヤリ眠ったり、顔を赤くして泣いたりしている
私のベビーは名札を見なくても
大勢の似通った顔の中でもすぐにわかる
ひときわ大きなよく通る声で、元気いっぱいに泣いているから
「すぐにわかっていいわね、本当にいい声!将来は声楽家かしら?」なんて言われながら
声楽家はともかく、
これだけ元気にしっかり主張する我が子は
なんとも誇らしく頼もしい
幼児期になっても
泣くと町中に響き渡るような美声を披露して
しもべは抱っこやおんぶをして差し上げたり
時にはご所望に応じてオヤツなども
すっかり大きくなり
今はもう大声で泣くようなこともないけれど
嫌なことはイヤ、やりたいのはコレ!
と強く主張することを どうかやめないで
小さな声でひっそり泣いたりなどしないで
しっかり抗議し 欲しいものは手に入れる!
そんなふうにたくましく生きていってほしい
元しもべは心から願っております
「窓越しに見えるのは」
#152
真っ白な糸を 茜の根で染めて
赤い糸を作ろう
緋色と朱色に染め分けて
美しい赤い花が溢れ咲く
絨毯を織る
あのひとと暮らす部屋を
あたたかく彩るやわらかな絨毯
一本一本 一段一段
心を込めて 織り上げていく
どれほどの時がかかるだろう
毎日ずっと休まず手を動かして
子にも孫にも使い継がれるよう
しっかりと丈夫に丹念に仕上げる
赤い糸は 赤い花はわたしの祈り
大切な人たちの日々を
あたたかく守り続けるように
「赤い糸」
#151