No.3
世良田 イト(女、17歳)
真田 玲史郎 (男、17歳)
―――――――――――――――――――――
「レー、やっほー」
「おうおうイトちゃん、よくやってきましたね〜」
「ちゃん付け気持ち悪いよ」
「なかなか酷いね」
土日の昼下がり、イトは玲史郎の家に来ていた。
「で、なんで呼んだの?」
「イトさー、あの〜アクション漫画読みたいって言ってたでしょ。学園モノの」
「うん。で?」
「手に入れたから、読ませてあげようと思ってね」
「えっ!いいのっ!?やったー!」
「ほんっと、漫画に目がないね〜」
「うわぁあああありがとう!この主人公も好きなんだけど、ここの人!この人の見た目が刺さるんだよね〜」
「ふーん、その人、俺と真反対の見た目だね〜」
「そー?んー、まぁ確かに」
「んー……ま、ゆっくり読んでってよ」
「ありがとう」
No.2
世良田 イト(女、17歳)
真田 玲史郎 (男、17歳)
―――――――――――――――――――――
「あ!」
「イト〜」
学校の外でイトと玲史郎が鉢合わせる。
「なんで学校の外いんのー?」
「部活の外周」
「ふーん。将棋マンのくせに外周か…」
「なんでもいいでしょーが!!」
「邪魔していいー?」
「ダメ〜!今追い風吹いてて主人公気分だったから、邪魔しないでお家に帰ってなさい」
「はいはーい」
No.1
世良田 イト(女、17歳)
真田 玲史郎 (男、17歳)
―――――――――――――――――――――
「さあさあ、イトー」
「…なに?」
「今年の抱負は〜??」
わざとらしい笑顔でイトに近付く。
「特にない」
「あらら、今は猫タイム?」
「うるさーい。レーはなんなの」
眉を逆はの字にしながら玲史郎に言葉をぶつける。すると、玲史郎はニヤリと笑う。
「俺?よくぞ聞いてくれた。楽に楽しく生きる!」
「じゃあ私もそれ〜」
「ズルい。本当の目標は…将棋全国行き!だね」
玲史郎が自信満々の顔で言う。
「んー頑張って」
「で、本当の抱負はなんなのよ」
明けまして おめでとう
目を潤ませ髪を涙で濡らす主様。
辛かったんですよね。孤独だったんですよね。
何もかもくすんで見えたんですよね。
そんなに辛くても、なんで自分が辛いかわからなかったんですよね。
私の言葉は通じない。
だから、寄り添うことしかできない。誰にも気付かれず、独りで苦しむ主様に。
「泣いてはいけないよ。たくみ。余計辛くなる。」
主様は自分自身に泣いてはいけないと言い聞かせている。けど、主様が辛いという事実は変わりやしない。私は寄り添うことしか出来ないけれど、泣いてもいいんですよ。主様。
夕方、とある空き地にひとりと一匹の影が映る。