吐く息が白い。地面からザクザクと音が鳴る。
かなり降ったのね、昨日の夜。
今日は満月か。街灯がない所も明るい。
あたり一面、白い世界の中私は歩く。
クリスマスも終わり、1年の終わりが見える。
なんかしたっけな。今年。
何もしてないわね。結局。
人気のない白線がわからない道を歩く。
こんなに明るい道なんて初めてね。
何?私を励まそうとしてくれてんの?あんたら。
失敗続きの私を、お先真っ暗な私を励まそうとしてくれてんの?
ふふっ、なんてね。私、月明かりの中で何回泣いたのかな。うまくいかず、バカにされてきた私。
もう一度、頑張ってみようかな?
もうなんか、寒いのが心地良いくらいになってきた。
太陽よりも月が好き。優しい気持ちになる。
そして今日は雪のお陰で更に強い月を感じられる。
月に照らされた雪が淡く光を放っていた。
あのね、サンタさんわたしいい子にしてたよ。
だからプレゼントくださいな。
でも、ぬいぐるみやおもちゃじゃないのよ。
てきるなら、わたしに希望をください。
あのね、今わたし入院してるの。
とても重い病気なんだって。
長くは持たないんだって。
お母さんとお父さんを悲しませたくないの。
だから、サンタさんわたしに希望をください。
いい子にしてるから、おねがいします。
おねがい…
「母ちゃん早く早く〜!」
「はいはい」
ある街に仲のよい親子があったとさ。
「今日な、俺な、逆上がりできてん。すごいやろ?」
息子は上機嫌に母親に話す。
「あんたすごいな。母ちゃんようやらんわ。ほんま運動神経いいだけあるわ。父ちゃんに似たな」
母親は、優しく息子に声を掛ける。家のなかでは、暖房が軽くついてる。
「俺、大きくなったら父ちゃんみたいに優しくてかっこいい人になりたい。なれるやろ?」
息子は、口を大きく開けて笑う。前歯が何本か抜けている。
「そうやね〜。あんたならできるんちゃうかな。そんときは、母ちゃん守ってもらうで!」
そう言って、母親は台所に向かう。
「何食いたい?」
「カレーが食いたいな」
「ハイよ」
息子は、テレビをつけて子供向け番組を見る。
「ただいま」
「父ちゃんおかえり!」
「お疲れさん、ビールいるかい?」
父親の帰りに、家族そろって迎える。
「ただいま、どうした?いいことあったのか?
母さん、ビールお願い」
「はいはい」
「父ちゃん、俺ね俺ね!」
そんな時間が過ぎていく。
寒いはずの廊下も気にならないくらいの暖かさ。
「すごいじゃないか!」
「でしょでしょ!」
「ご飯できるよ!」
「「はーい」」
いつか俺も大人になった。ふとした時、この頃を思い出す。
誰かと笑い合って、助け合って、ささえ合う。
その時感じた暖かさは感じた時からは離れているけど、
遠くにあっても心は感じるから。
今更遅いなんてことがないように、人の暖かさを知り、将来も生きていたいな。
「もうすぐクリスマスだね」
舞が白い息を吐きながらいった。
「どこかいきたいところとかないのか?」
僕はそんな彼女に尋ねる。空気の冷たい街の中でコンビニのコーヒーを飲む。澄んだ空にガラスが飛んでいる。
「別にいきたいところなんてないよ」
「ほんとか?」
そんな会話をしつつ、僕は舞と一緒に家にはいる。
「お邪魔します」
舞は一礼し、そのままソファの上に寝転がる。
礼儀がいいのか悪いのか。まぁ、それが彼女の魅力なんだけど、
「買っていたけど、つけるか?」
「つけたい!」
僕は袋からろうそくを取り出す。ちょっと長めの模様のついたろうそくだ。ライターを取り出し火をつけようとすると、
「私にやらせて!」
そう叫んで舞はライターを奪うようにほくの手から取った。
「急に手伸ばすなよ。危ないじゃないか」
僕は呆れていった。やけどでもしたらどうするつもりなのだろうか。
「ごめん…そうだよね。うん…」
そこまで強く言ったつもりはないけど、舞は下を向いた。落ち込んだ時にする癖だ。
「べ、別にいいからさ!早くつけてみてよ!」
僕は励ますように声を大きくした。
「そうだね。早くつけてみよう!」
情緒不安定だな。いつもは真面目なのに、僕といる時は限りなく子どもっぽくなる。これが本来の彼女なのか。
「じゃあ、つけるね」
舞がろうそくに火をつけた。
「部屋暗くしたほうが雰囲気出るかも?」
僕は部屋の電気を消した。ろうそくの炎が僕らを照らしている。
身や心を包んでくれるような明かり。
優しい光に照らされている時に、舞は口を開いた。
「さっき、どこに行きたいって聞いたじゃん」
「うん」
舞は暗い部屋でもわかるくらい赤くなり、
「勇人が一緒にいるなら行きたいなって」
部屋に灯ったろうそくは、静かに揺れていた。
もうすっかり冬ね。毎日寒くて嫌んなっちゃう。
あなたは何にも気づいてくれない。私の気持ちを。
ずっとあなたに恋をしているのに、馬鹿みたい。
あなたってばまったく変わらないんだもん。
最初はなんともなかったのに意識するようになったわ。
他の女子と喋っていると胸が締め付けられるの。
あの時なんで私に笑いかけたの?
優しく声をかけてくれたの?
私の頭の中はあなたでいっぱい。
今、雪が振っているの。窓の外に見える雪がだんだん積もっていく。あなたへの想いもときが経つにつれて大きくなってきたわ。
私の恋した、あの頃のあなたへ。そして、今のあなたへ、私に気づいてください。
積もった想いはいつか届くと信じて…