わたしなまえは、なぁに
そうきいても、だれもなんにもこたえてくれない。
わたしのなまえ、わからないのかなぁ。
だからわたしは、たくさんのひとにきく。
わたしのなまえはなぁに
って。
いつか、わたしのなまえを
しっているひとが
あらわれるはずだから。
わたしの名まえは何?
そうきいても、だれも何も答えてくれない。
わたし、小さいころは
ここにすんでいなかったのかなぁ
だからわたしは、色んな人にきく。
わたしの名まえは何?
って。
いつかわたしの小さいころを
知っているひとが
あらわれるはずだから。
私の名前は何?
そう聴いても誰も何も答えてくれない。
私、名前が無いのかなぁ。
私は、人に聞くのをやめた。
どうせ私の名前を知っている人は誰もいない。
私と今を生きる人じゃ、時間がずれている。
そのことに気づいたのは何時だっただろう。
だから私は色んな人に聞く。
ねェ、わたし、いつ死んだの?
いつかお化けが見える人が
現れるはずだから。
「私の名前」
視線の先には
緊張でいじいじしてる、私の手。
視線の先には
好きな男の子の、上靴。そして足。
視線の先には
好きな男の子の、瞳。
視線の先には
私が好きになった、笑顔。
視線の先には
あれ
何が見えるっけ
何だっけ
あれ
あれ
あれ
視線の先に
何があるっけ。
「視線の先には」
私だけにその綺麗な瞳を向けていてよ。
私だけ見ていてよ。
私だけ愛してよ。
ねえ、ねえ、ねえねえねえ。
今余所見したよね?
あの女見てたよね?
ねえねえねえねえ
酷いよ
彼女は私なのに
私だけを愛してるんじゃないの?
酷いよ酷いよ
貴方を愛で縛るのは私だけでいいよね?
「私だけ」
終わりにしよう
この世界を
この腐った世界を
腐ったくせに
根っこだけぐっと張った
この世界を。
ビルの上に建つ。
キラキラと夜景が輝く。
邪魔だ。
手をかざす。
終わりにしよう
この世界を。
手を横に振った。
世界は塵になって舞ってゆく。
終わりにしよう
この世界を
何もいらない
俺と一緒に
世界も終わらせる。
ただそれだけ。
「終わりにしよう」
目にしているのは
目を閉じた彼。
もう目を開けることの無い彼。
もう二度と喋れない彼。
もう二度と起き上がれない彼。
もう二度と会えない彼。
もう死んでしまった彼を
大好きな彼。
愛している彼。
「目にしているのは」