お題 愛を叫ぶ
愛を叫ぶ
わたしはともみが羨ましい。胸を張って前に立てるんだから。
「ともみ、あのさ。」
「何?」
いつも輝かんばかりの笑みを浮かべていて、わたしは焼けそう。
お題 楽園
楽園
私は内見に訪れた一軒家を楽園だと思った。本棚をいくつも置いて、本でいっぱいにできるくらいの強さがあるから。本を詰めて、引っ張り出して、また詰め直す。楽しみだわ。
お題 風に乗って
風に乗って
風に乗ってどこからか届く噂話。
「岩手県の〇〇さんが呪われたそうよ。」
「それなら、青森の△△が怪しいわね。」
わたしの愛しいひとの噂は届かない。
風に乗って、遠くへ行けたらいいのに。
お題 刹那
刹那
ため息をついた刹那、またパソコンとスマホが鳴った。
「ああーっ! せっかく寝れそうだったのにぃ。」
アプリ会社につとめるあい子は某日リリースした学校用アプリ〈ボックスノート〉の評判が悪く、ずっとクレーム電話やメール、誹謗中傷コメントに対応している。
「今度もまたすごいコメントだわ。あれが公共アプリに載せられると思うと胃が痛くなるわね。」
〈「とても便利で成績アップ!」なんて謳いに乗って入れて、もう最悪ですよ。生徒からの評判は最悪だし少しは治ると思ってアップデートしたらボックスの中に個人情報を公開されてボックスごと削除しました。受験準備用ボックスだったのですべてが消し飛びました。〉
返答を打ち直そうと座り直した刹那、またスマホとパソコンが鳴り響く。
「ああっ!」
スマホを取り、メールを見ようとしたところでまた受信ボックスにメールが追加された。何かをしようとした「刹那」でストレスが溜まってしまう。
お題 生きる意味
生きる意味
生きる意味なんてものはない。あるひとは立派だ。もともと、私は底辺以下で、やっとできたボーイフレンドにふられた女。生きる意味などとうになくした。今は必要としてくれるひとがいるからで、そのひとさえ死んでしまったら私も生きる意味はない。
それも、そのひとは私の母で、要介護だから世話しているのであって、私は介護人レベルだ。
ああ、母が妹を抱いて涙を流す夢を見るのは何回めかしら? 妹を可愛がって、私をほったらかしたまま家を何日も開けて、帰ってきたと思ったら妹は青白い顔をして母の腕に横たわり、細い腕を垂らしていた。母はさめざめと泣き崩れていて、私には見向きもせずに。父は母はを責めて、責めて、責めまくり、離婚。ひとりむすめになって大切にされるかと思っても母はふさぎこみ、私は世話人レベル。。