貝殻
幼い頃、よく一緒にいた男の子に小さい貝殻を貰った。
「綺麗でしょ?良かったらあげるよ。まだ持ってるから」
そう言って、優しく包んだ貝殻を差し出す。
私が受け取ると、友達に呼ばれ走り去ってしまった。
渡す時の優しさと駆け出した笑顔に、私はすっかり心酔していた。
彼と話したかったし仲良くなりたかったけれど、上手く話せず苦手意識を持たれたり、ついうっかり気持ちを漏らしてしまうのが怖くて何も出来なかった。
そんな私に、告白する勇気なんか持てなかった。
彼は海での急な水難事故によって死んでしまって、私は悲しさが通り越して泣けずに唖然としていて、何も出来なくなっていた。
生きている間に何も出来なかったことは、月日がたった今も後悔しているし、これからもずっと引き摺って私を呪うのだろう。
行き場の失くした私の呪いは私の恋を吸収し、私を締め付けていた。
唯一、私と彼を繋いでくれた貝殻を、両手で優しく包み込んで胸に当てて、彼を思い出してはまた呪われて、それでも手放すことは出来なかった。
そんな時、私の気持ちを知っている親友から風鈴を貰った。
「風鈴の音が鳴るところ?舌?って言うんだけど、そこ壊しちゃったからあげるよ。貝殻をつけてみたらどう?」
言われた通りに私は、貝殻に穴を開け糸を通して繋げた。
風に吹かれて綺麗な音色を奏でて、彼の明るい笑顔を思い出した。
周りを自然と笑顔にするような、無邪気で優しいその輝きに、私は恋をしていたことを改めて思い知らされた。
そんなことを思い出させる、優しく癒すような音を出す煌びやかなガラス細工に、私の心は幾分か救われた。
彼が、前の向き方を教えてくれているような気がした。
きらめき
暖かい 落ち着くような
輝かしい 湧き上がるような
悔しさを 噛み締めるような
寂しさを 慰めるような
ぎらぎらと 肌を刺すような
惹かれる 目が離せないような
寒さを 忘れさせるような
静寂を 照らすような
そんな
僕を殺す きらめき
些細なことでも
シャーペンをなくした
探したけど見つけられなくて
でも諦めることは出来なくて
あなたも一緒に探してくれた
大事なものなんでしょ。って
結局あなたが見つけてくれて
お礼をしたかったのに
たかがペンくらい大丈夫だよ
と言っていた
大好きなあなたがくれたのに
そんな些細なこと、忘れてしまったのかな
心の灯火
疲れた時 痛い時
悲しい時 諦めたい時
思い出そう。
目的を 理由を
毎日を 手段を
また突き動かしてくれる
灯火を。
それは呪いか
それは激励か
1度置いておいていいじゃんか
開けないLINE
初めて彼女が出来た。
向こうから告白してきて
その時まで気づくことも出来なかった。
太ももが震えた。
元々友達としてLINEは交換していたが
付き合いはじめてから初の連絡だった。
『色々話そ?』
なんて返せばいいか分からなかった。
周りのヤツに聞いてみて
やっと開くことが出来た。
「今までモテとか意識してなかったよな。
そんなお前を好きになったんだから
何も考える必要は無いだろ」
思い出していく
言葉を血肉にして
指を動かした