私の当たり前____
気持ち悪い。
歯も髪も目も口も鼻も肌も顔も。
手も腕も足も爪も性格も口癖も。
とにかく全部が全部嫌い。
大っ嫌いで大嫌い。
気持ち悪くて仕方がない。
そう思ってる。ずっとそう。
なのに、メイクをして髪も巻いて、
おしゃれな服を着た自分を洗面台の鏡で見ると
あれ、?意外と可愛くない?
なんて馬鹿みたいなことをたまに思う。
そんな自分が気持ち悪い。
そのあと、外へ出て周りを見ると、
改めて自分は気持ち悪いのだと自覚する。
インスタの友達の写真を見ると
改めて自分はブスなのだと自覚する。
友達に会って綺麗な目に細い足サラサの髪に綺麗な歯。
改めて自分は気持ち悪くて負け組でブスなんだと思う。
そして、意外と可愛い?なんて言っていた
自分を思い出して吐きそうになる。
毎日毎日そんな意味のないことをしてしまう。
毎日毎日そんな言い訳をしてしまう。
毎日毎日そんな気持ち悪い自分を呪ってしまう。
わかってる。
私には、
歯も髪も目も口も鼻も肌も顔も、
手も腕も足も爪も感情も思考も、
あるのだと。
ない人がいる中、私はそれがある。
それだけで十分幸せじゃないか。
わかってるよ。
でも、
歯の並びも、目の大きさも、口の形も、鼻の高さも、
肌の綺麗さも、顔の大きさも、手の長さも、
腕の綺麗さも、足の細さも、爪の形も、
全部全部、数ミリ。
たったの少しの違いでそれは人生を左右する。
そんなことあっていいのかな?
そんな数ミリで死にたいなんて言ってる人がいるのに。
そんなことあっていいのかな?
全部全部気持ち悪い。
その感情はもう、私の中では当たり前。
七夕____
学校の廊下に竹が2本あった。生徒が短冊を書きすぎてほぼ竹なんて見えなかったかが、放課後私も友達とその短冊だらけの竹の前に立った。
「彼女をください!!」
「あわよくば赤点回避」
「推しと結婚♡」
「楽しい高校生活になりますよーに」
みんな、それぞれ思い思いの願い事を書いていた。私は何を書こうかと迷ったが、真っ先に浮かんだのは好きな先輩のことだった。
ロッキンというライブに行く約束をしていた私たちはもう少しで当選結果がわかる頃だった。「ロッキンに行けますように!」私はそう短冊に書いた。
「まったー!」
飾ろうとした瞬間友達が私の手を止める。
「先輩の名前入れないの??」
「えー、バレたら最悪じゃん」
「いやいや、こんだけあるんだから大丈夫だよ!」
「確かに。じゃあ、イニシャルだけ入れるよ」
「そーしな!そーしな!」
友達はニカニカしながら短冊に「好きな人と両思いになれますよーに♡」と書いた。私は、「T先輩とロッキンに行けますように!」と書きなるべく目立たないところに飾った。
「ねぇ!T先輩ってのが話題になってる!」
そう友達からのLINEに私は思わず声を上げた。
先輩は友達と同じ部活であり、大盛り上がりで話をしていたため思わず耳を傾けるとわたしの名前が上がっていたとか。そして、先輩のスマホの中には私の短冊があったとかも…。
ロッキンには無事当選した。
だけど、次どんな顔をして会えばいいのか、。
日差し____
「あっつー」
少し耳に意識を向けるだけで、
その言葉は山のように聞こえてくる。
暑くて、日差しも強くて、いいことなんて何もない夏。
特に日差しなんて最悪だ。
毎日何度も日焼け止めを塗り、
なるべく焼けないようにする。
それが結構めんどくさい。
でも、意外とそういうのも青春だなと最近感じる。
みんなで扇風機を持って下校しながら
「あっつー」って5分おきには言ってて、
暑いのに焼けたくないから上下ジャージを着て
「あっつー」って言うと「脱げよ笑」なんて言われて、
好きな人が体育中だとベランダに出てみんなで
「あっつー」って言いながら一人は顔を真っ赤にして、
それが結構楽しい。
赤い糸____
そんなもの、この世にあるのかな。
夏____
クーラーの効いた部屋。窓から差し込んだ光が私の瞳に映り込む。細い目で、カーテンを開けると、山の奥から飛びかかってきそうなくらい大きな雲が、真っ青で明るい青空に一つだけあった。手を伸ばせば届くんじゃないかってぐらい雲は私に近づいて来る。
スマホを見るともう10時だった。
中学校生活最後の夏休みはあと5日で幕を閉じる。
階段を降りると、リビングには誰もいなかった。食卓には一枚の「出掛けてきます。お昼はチンして食べてね」という母からの手紙がおいてあり、その隣には昨日のカレーが残っていた。この暑い日にカレーか、と思ったが、1日たったあとのカレーは上手いと皆が言うのだから、きっとこんな日でも美味しいのだろう。
誰もいないリビングにはクーラーの風の音と夏らしいセミの鳴き声が、家の中まで聞こえてきた。私はひんやりと冷えきった床に足をつけ、台所に向かった。
冷蔵庫を開けた瞬間の匂いと、冷たい空気が私に当たる。私は、1番に近くにあった冷たいサイダーを開けた。プシュと音を立て、ひと口いや、ふた口飲み干した。朝起き抜けの私の口はカラカラだ。それを一気に刺激のある炭酸がリフレッシュされ、程よい甘さが舌を和らげる。これを飲まないと1日が始まった気がしない。
私は冷凍庫を開けて、ガリガリくんを手に階段を駆け上った。出窓に座りサマーウォーズをつける。やっぱり夏は最高だ。