七夕____
学校の廊下に竹が2本あった。生徒が短冊を書きすぎてほぼ竹なんて見えなかったかが、放課後私も友達とその短冊だらけの竹の前に立った。
「彼女をください!!」
「あわよくば赤点回避」
「推しと結婚♡」
「楽しい高校生活になりますよーに」
みんな、それぞれ思い思いの願い事を書いていた。私は何を書こうかと迷ったが、真っ先に浮かんだのは好きな先輩のことだった。
ロッキンというライブに行く約束をしていた私たちはもう少しで当選結果がわかる頃だった。「ロッキンに行けますように!」私はそう短冊に書いた。
「まったー!」
飾ろうとした瞬間友達が私の手を止める。
「先輩の名前入れないの??」
「えー、バレたら最悪じゃん」
「いやいや、こんだけあるんだから大丈夫だよ!」
「確かに。じゃあ、イニシャルだけ入れるよ」
「そーしな!そーしな!」
友達はニカニカしながら短冊に「好きな人と両思いになれますよーに♡」と書いた。私は、「T先輩とロッキンに行けますように!」と書きなるべく目立たないところに飾った。
「ねぇ!T先輩ってのが話題になってる!」
そう友達からのLINEに私は思わず声を上げた。
先輩は友達と同じ部活であり、大盛り上がりで話をしていたため思わず耳を傾けるとわたしの名前が上がっていたとか。そして、先輩のスマホの中には私の短冊があったとかも…。
ロッキンには無事当選した。
だけど、次どんな顔をして会えばいいのか、。
日差し____
「あっつー」
少し耳に意識を向けるだけで、
その言葉は山のように聞こえてくる。
暑くて、日差しも強くて、いいことなんて何もない夏。
特に日差しなんて最悪だ。
毎日何度も日焼け止めを塗り、
なるべく焼けないようにする。
それが結構めんどくさい。
でも、意外とそういうのも青春だなと最近感じる。
みんなで扇風機を持って下校しながら
「あっつー」って5分おきには言ってて、
暑いのに焼けたくないから上下ジャージを着て
「あっつー」って言うと「脱げよ笑」なんて言われて、
好きな人が体育中だとベランダに出てみんなで
「あっつー」って言いながら一人は顔を真っ赤にして、
それが結構楽しい。
赤い糸____
そんなもの、この世にあるのかな。
夏____
クーラーの効いた部屋。窓から差し込んだ光が私の瞳に映り込む。細い目で、カーテンを開けると、山の奥から飛びかかってきそうなくらい大きな雲が、真っ青で明るい青空に一つだけあった。手を伸ばせば届くんじゃないかってぐらい雲は私に近づいて来る。
スマホを見るともう10時だった。
中学校生活最後の夏休みはあと5日で幕を閉じる。
階段を降りると、リビングには誰もいなかった。食卓には一枚の「出掛けてきます。お昼はチンして食べてね」という母からの手紙がおいてあり、その隣には昨日のカレーが残っていた。この暑い日にカレーか、と思ったが、1日たったあとのカレーは上手いと皆が言うのだから、きっとこんな日でも美味しいのだろう。
誰もいないリビングにはクーラーの風の音と夏らしいセミの鳴き声が、家の中まで聞こえてきた。私はひんやりと冷えきった床に足をつけ、台所に向かった。
冷蔵庫を開けた瞬間の匂いと、冷たい空気が私に当たる。私は、1番に近くにあった冷たいサイダーを開けた。プシュと音を立て、ひと口いや、ふた口飲み干した。朝起き抜けの私の口はカラカラだ。それを一気に刺激のある炭酸がリフレッシュされ、程よい甘さが舌を和らげる。これを飲まないと1日が始まった気がしない。
私は冷凍庫を開けて、ガリガリくんを手に階段を駆け上った。出窓に座りサマーウォーズをつける。やっぱり夏は最高だ。
日常____
ある日親友が言った。
「あー!本当に受験ていや!」
「それな!!もう勉強したくないよー」
と私も共感する。
しばらく二人で掃除をサボりながら愚痴りあった。
ある日親友が言った。
「よし!青春のチケット一緒に取ろう!」
「青春のチケット?」
と私は疑問を返す。
しばらく二人で教室の空を眺めていた。
ある日私が言った。
「うん!長ーい青春のレシートもらおう!」
「青春のレシート?」
と親友が疑問を返す。
しばらく二人で笑いながら下校した。
ある日私が言った。
「わー、本当にあっという間なんだね」
「だねー、うちらももう高校生かぁ」
と親友が共感する。
しばらく二人で泣きながら、
チケットとレシートを強く握りしめていた。