もし俺が鳥だったとしても「あれ? 飛んでる時足どうするのが正解だったっけ?」って気になって飛ぶの止めちゃいそうだし、そもそも高いところが好きじゃないから、別に飛べなくてもいいや。
そんなことより、嫌な事を3歩歩いたら忘れられる頭になりたいな。
鳥のようにというより、鶏のように。
さよならを言う前に。
あなたに伝えたい言葉があるんだ。
理解されないかもしれない。
が、それでも言うよ。
永遠に届かなくなる前に……。
うざがられても、もう構わない。
最後まで分かりにくい奴でごめんね。
それじゃあ元気でね。……さよなら。
かつて、とある人間が
「明けない夜はない」
と言ったそうだ。はたしてそれは本当だろうか?
空模様さえ伺い知ることの出来ない、この闇の世界にも本当に朝は来るのだろうか?
本当にそんな日が来るのであれば、私はまず友の姿を確認することだろう。
——哲学する深海魚
「俺さ、ふと思ったんだけど鏡の中の世界って……」
「急にどうしたの?」
どうしたの? と口で尋ねながら、僕は心の中で「ああ、またいつものか」と思った。
僕の親友には突拍子もないことを思いついては語りたがる悪癖があるからだ。
……放課後に付き合わされるこっちの身にもなってほしいよ。
「まあ聞けって。創作でよくあるだろ? 鏡の中の世界」
「あるね。鏡の中には左右があべこべになった世界が、ってやつでしょ?」
「でもさ、本当にそんなことあるのか? って思ってな……」
「本当にも何も、そもそもが創作の話じゃないか」
「そうなんだけど。そこで思考停止しないのが俺なんだよ」
「へーすごいなー」
適当に煽てる。いちいち本気にしていたらいつまで経っても下校出来やしない。
「……話を戻すぞ。俺はな、あれは嘘だと思うんだよ」
「そもそも創作だからね」
「だーかーらッ! そこで思考停止するんじゃない! いいか? 俺は『鏡の中には鏡に映っているものしか存在しない』と思うんだよ。というか、存在しないものが存在することのほうがおかしい」
得意気に話す親友を前に、僕はどんな表情をしていただろうか? 鏡があれば確認していたに違いない。
「で? それがどうしたの?」
「そうなると、だ。鏡の中に仮に入れたとしても極めて狭い、窮屈な空間に閉じ込められる可能性が高い。鏡の中を大冒険! なんて出来ないはずだ」
「なるほど……?」
「どうだ? 怖いだろう!?」
親友は何を言っているのだろう? というか、コイツと親友を続けていていいのだろうか?
「悪い、怖くはないな」
「なん……だと……?」
困惑する親友を尻目に僕は言葉を続ける。
「正直に言うけど、スタート地点が既にぶっ飛んでるから、怖がりポイントが分からないよ。大体なんでこんな話を?」
聞けば、今度この設定を元に怪談を作って一儲けしようと画策していたらしい。そうそう上手い話はないと思うんだけどなぁ。
「なら、もうちょっと地に足を着けた設定のほうがいいんじゃないか? 今の話は一部の創作に対する批判としか思えないよ」
「設定……設定か」
また一からやり直しだ……と肩を落とす親友を、僕は適当に励まし、
「じゃ、僕はそろそろ帰るよ」
と、言い残して帰路に就いた。
翌朝。
顔を洗い終えた僕の前にあるのは洗面台の鏡。
ふと、親友の昨日の話が脳裏をよぎる。彼の話だと、床の映っていないこの鏡の中に行ったら……どうなるのだろうか?
あれ? そう思うとちょっとだけ怖い気がするぞ?
僕は嫌な想像を振り払うべく何度か頭を左右に振る。
「まさか、ね……」
普通の鏡であることを確かめるべく、僕は鏡に触れる。
。たっなに目羽るす悔後を動行の己は僕、間瞬の次
いつまでも捨てられないもの、かあ。
あるよ!
あるある!
えっと、ほら……!
あれっ? ある、はず、なんだけど、なあ……。
あっ、そうだ!
命!!
はいあったー! いつまでも捨てられないものあったー!
あの、虚しくなってきたから、もう辞めてもいいですか。
いい年こいておバカキャラが捨てられないなんて、痛々しいだけだと思うんですけど。
需要あるから駄目? あなたの立場なら、そりゃそう言いますよね……聞くだけ無駄でした。
いつまでも捨てられないもの、それはおバカキャラという呪縛、なんて表舞台じゃ言えないよね。はぁ……。