暗がりの中で
夜、ふと目が覚める。
月のない夜だった。
暗がりの中、手探りで、卓上のランプを付ける。
時計を確認すると、まだ夜中だった。
もう一度寝ようと目を閉じてみるけれど、頭が冴えて寝れそうにない。
温かい飲み物でも飲もうと、お湯を沸かしてココアをいれる。
毛布を肩まで掛けて、両手でマグカップを包み込む。
数口飲んで体が暖まってくると、なんだか寝れそうな気がした。
ココアを飲み干したカップを置いて、明かりを消し、毛布に潜り込む。
目を閉じると、少し眠気がやってきた。
意識して呼吸を深くする。
そういえば部屋の電気を付けなかったけど、わりと何とかなるもんだなと思いながら、眠りに落ちていく。
紅茶の香り
あたたかな湯気とともにふわりと、鼻をくすぐる香り。
自然とこぼれるため息。
無意識にしていた緊張がほどけていく。
この時間だけは、気がかりな事も忘れてこの香りに集中したい。
行かないで
「…っ。」
行かないで、そう、喉から出かけた言葉を飲み込む。
泣いてすがっても、きっと君は行ってしまうのだろう。
どこで間違ったのだろう。
「またね。」
また会える保証なんてないのに、そんな言葉しか出てこない。
こんな形で別れが来るなんて少しも想像してなかった。
少し考えれば分かることだったのに。
「元気で。」
あぁ、行ってしまう。
行かないで。
言えない言葉の代わりに、あなたの健康と幸せを願う。
どこまでも続く青い空
どうして。
私を置いて、あなたは独りで行ってしまった。
寂しい。
淋しい。
心が寒さで荒れ狂って、どうにかなってしまいそう。
あなたがいなくなる時に私の世界も終わるのだと思っていたのに。
私の心臓はいつもと変わらず力強く脈打っている。
果てしない孤独を抱えて見上げた空は、それでも、どこまでも青く美しく、遥か彼方に続いている。
忘れたくても忘れられない
あなたと関わりがあったのは、10年以上前のたった1年程でした。
あなたにとって私は、ただの大勢の内の1人だったことでしょう。
もしくは、対応が面倒な相手の1人だったかもしれません。
あの頃の私は、また来年も当たり前に会えると思っていました。
それがいかに愚かな考えだったかは、今になって良く分かります。
秘めた想いは秘めたまま、謝罪と、最大限の感謝だけでも伝えていたら良かった。
きっと、もう会うこともないでしょうし、もし会えたとしても、あなたは私を憶えてはいないでしょう。
それでも、遠出をする度にもし会えたらと思わずにはいられないのです。
ありがとう。
あなたのお陰で、私は少し変われました。