小石川梢子

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5/23/2024, 8:16:24 AM

『また明日』

「また明日!」
 そう言って彼女と別れたのはもう1ヶ月も前のこと。それが彼女との最後の言葉だった。付き合い始めたころは、こんな別れになるだなんて予想もしていなかった。

 彼女はいつも元気だった。美人というタイプではないけれど、愛嬌があって可愛かった。僕が喜んでいるときは一緒に喜んでくれて、僕が落ち込んでいるときは慰めてくれる、そんな理想の彼女だった。
 彼女は料理が下手だった。だからいつも僕が料理を振舞ってあげた。彼女は「美味しすぎる!」とやや過剰なくらいに喜んでくれた。お互いのダメな部分を補い合える、そんな最高のパートナーだったと思う。

 また彼女に会いたい。何かダメな部分があるなら直すから、彼女に会って一緒に笑いあいたい。僕から彼女を離してしまうなんて、神様は本当に意地悪だ。僕と彼女の間には大きな溝が出来てしまったけれど、すぐに会いに行くよ。だから待ってて。

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「また明日!」
 そう言った彼と別れたのはもう1ヶ月も前のこと。
それが元彼との最後の言葉だった。付き合い始めたころは、こんな別れになるだなんて予想もしていなかった。

 元彼は頭が良かった。イケメンな訳ではないけれど、清潔感があって好感が持てた。分からないことがあれば教えてくれて、一緒に問題の答えを考えてくれる、そんな理想の彼氏だった。
 いつしか、彼が私の料理に口を挟むようになっていた。時短やレンチンは悪だと私の料理を制限するようになった。彼はたまに料理を振る舞うと、執拗に「美味しい」という感想を聞き出し、独り満足していた。いつの間にか、意見を押し付ける最悪のパートナーに変容していた。

 もう彼には会いたくない。彼とは沢山の時間を過ごしたけれど、全部無駄な時間だった。彼と顔を合わせることすらしたくなかったから、ネット上で別れを告げた。やっと、彼から離れることが出来た。もう二度と会うことはないから。さようなら。

5/22/2024, 2:02:37 PM

『透明』

 
 私の心は透明だった。私の心には、深くて、暗い海があった。しとしとと降り続く雨があった。何も起こらない、何も変わらない、つまらない世界だった。
 でも、あなたがそれを変えた。私の心に、初めて朝日が昇った。虹が架かった。漣が起こった。それは、私が初めて経験する「変化」だった。
 色のくすみも教えてくれた。分厚い雲が広がる真っ暗な夜を知った。嵐の不安さも知った。
 私に色をつくれるのはあなただけだった。愉しさも、歓びも、哀しさも、怒りも、あなたが教えてくれた。

あなたに伝えたい一言がある。
「色を教えてくれて、ありがとう!」

5/20/2024, 12:56:18 PM

『理想のあなた』

 綺麗な人になりたい。見た目の話じゃない。心の話だ。人を助けられて、人に頼られる、そんな人になりたい。
 だけどそれよりも、心を覆う迷いの靄がない人になりたい。いつまでも過去を悔いない人になりたい。今は何をしようにも迷い、何をやっても、やらなくても後悔している。もっと良い選択肢があるんじゃないか、もっと良い選択が出来たんじゃないか。いつも迷って、後悔して、一人で悶えている。悶えるのは苦しい、辛い、悲しい、怖い。胸がツキツキする。「でも」、「だって」。いつもそう思っている。そんなことが無い人になりたい。
 でも、そんな人生楽しいんだろうか。迷わず、後悔せず、どんな選択肢も迷わず、その結果を唯唯諾諾として受け入れる。何があっても「しょうがない」、「次がある」。そんなので進歩出来るんだろうか。
 迷いや後悔はやっぱり好きでないけれど、やっぱり必要なものなのかもしれない。理想のわたしは、今のわたし。そう思う自己肯定感の高さを大切にしていきたいと思う。

5/19/2024, 10:41:27 PM

『突然の別れ』

 夏休みが明けると、幼馴染がいなくなっていた。母を問い詰めると、夏休みの間に引っ越していったらしい。そんなこと俺は一言も聞いていなかった。アイツが教えてくれなかったこと、母も知っていて黙っていたことを恨んだ。学校が始まっていたが、いつも聞こえるアイツの笑い声がしない。なのに、クラスの奴らは平然としている。アイツという存在を忘れてしまったようだ。