小石川梢子

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『また明日』

「また明日!」
 そう言って彼女と別れたのはもう1ヶ月も前のこと。それが彼女との最後の言葉だった。付き合い始めたころは、こんな別れになるだなんて予想もしていなかった。

 彼女はいつも元気だった。美人というタイプではないけれど、愛嬌があって可愛かった。僕が喜んでいるときは一緒に喜んでくれて、僕が落ち込んでいるときは慰めてくれる、そんな理想の彼女だった。
 彼女は料理が下手だった。だからいつも僕が料理を振舞ってあげた。彼女は「美味しすぎる!」とやや過剰なくらいに喜んでくれた。お互いのダメな部分を補い合える、そんな最高のパートナーだったと思う。

 また彼女に会いたい。何かダメな部分があるなら直すから、彼女に会って一緒に笑いあいたい。僕から彼女を離してしまうなんて、神様は本当に意地悪だ。僕と彼女の間には大きな溝が出来てしまったけれど、すぐに会いに行くよ。だから待ってて。

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「また明日!」
 そう言った彼と別れたのはもう1ヶ月も前のこと。
それが元彼との最後の言葉だった。付き合い始めたころは、こんな別れになるだなんて予想もしていなかった。

 元彼は頭が良かった。イケメンな訳ではないけれど、清潔感があって好感が持てた。分からないことがあれば教えてくれて、一緒に問題の答えを考えてくれる、そんな理想の彼氏だった。
 いつしか、彼が私の料理に口を挟むようになっていた。時短やレンチンは悪だと私の料理を制限するようになった。彼はたまに料理を振る舞うと、執拗に「美味しい」という感想を聞き出し、独り満足していた。いつの間にか、意見を押し付ける最悪のパートナーに変容していた。

 もう彼には会いたくない。彼とは沢山の時間を過ごしたけれど、全部無駄な時間だった。彼と顔を合わせることすらしたくなかったから、ネット上で別れを告げた。やっと、彼から離れることが出来た。もう二度と会うことはないから。さようなら。

5/23/2024, 8:16:24 AM