─ラブソング─
愛するキミに歌を送る。
歌詞はなんてことない日常で、
『愛』なんて言葉はどこにも見当たらない。
ラブソングだと思って聴かれちゃ困るんだ。
僕の愛に気がつかず「いい曲だね」なんて
能天気に笑うキミ。
汚い心が伝わったらきっと二度と見れない
そんな姿を、あと10年は隣で見ていたいから。
─理想郷─
此処は君の理想郷。
何でも叶う、理想郷。
何でもできる、理想郷。
理想郷に慣れすぎて、現実世界に適応できない。
できなくなる。
どうしようもなく可愛い君のため、
僕が何でもしてあげる。
此処は僕の理想郷。
─子供のように─
彼女はよく笑う子だった
嬉しいとき
楽しいとき
悲しいとき
辛いとき
死んでしまいたくなるとき
君はいつも、笑ってた
「…どうして笑うの?」
幼い僕はそんなことを聞いたことがあった。
人には聞かれたくないことがあるって、
理解していなかった。
「私が笑うと、みんなも笑うから」
「笑うと本当に楽しく思えてくるから」
「笑っていないと、耐えられないから…」
齢7歳、僕と5つ離れた彼女。
泣き顔が相応の幼子の頃から、面倒を見てきた。
泣いたことがない子だった。
ぽつぽつと言葉を溢す彼女の瞳は、
キラキラと光る液体で溢れていた。
──────────
あれから10年。
17歳になった彼女は、今でもよく笑う。
子供のように笑う。
それと、たまに泣く。
みんな、子供みたいだというけれど、
僕は君がやっと子供になれたのだと、
喜ばしく思うよ。
今の君には、受け入れてくれる友達がいる。
歳は5歳しか違わないけれど、
なんだか、娘を送り出す父親みたいな気分。
友人達に囲まれた彼女の笑顔は、
あの頃の笑顔よりも、ずっとずっと綺麗だ。
─君からのLINE─
既読無視がつらいってよく聞くけど、
未読無視の方がよっぽど辛いと思うのはボクだけだろうか。
既読がつくだけマシだろう。
君とのトークはボクからの一方的な言葉だけ。
だって君は死んだんだから。
分かっていても受け入れなれない。
今日もボクは君にメッセージを送る。
「早く帰ってきてよ」
「今日はカレーなんだよ」
「待ってるよ」
「そうそう、君と行ったあの遊園地潰れたらしいよ。面白いけどお客さん少なかったもんね。」
「…君との思い出がどんどん無くなっていくね」
「もっと色んなところ行っとけばよかったなぁ…」
返事が帰ってくるわけでもないのに、辞められない
…やっぱり受け入れられないよ。
─カレンダー ─
散らかった部屋。
やりかけの編み物。
あの時から止まったカレンダー。
そして僕への置き手紙。
”すぐに帰るよ"
今も、片づけられないままでいる。
全て綺麗さっぱり片付けてしまったら、
こんな思いもしないのに。
でも、ここを片づけてしまったら…
この世界から君が居なくなる気がして。
写真を撮るのが苦手だった君。
故郷から逃げてきた君。
今ではこの部屋だけが、
君が生きていたと教えてくれる。