【落ちていく】
恋というものは。唐突に、止める間もなく落ちていくものなのだと、私は知った。
これに比べたら過去に初恋だと思っていたものは、なんと淡く頼りなく可愛らしい想いだったことか。
相手のことが頭から離れず、一日中ぽかぽかと暖かな気分で、つい顔がにやけ、何をしていても心ここにあらずといった具合で。床や地面まで柔らかくなってしまったんじゃないかというくらい、気持ちがふわふわしていた。嬉しくて幸せで、実際に五センチくらい浮いていたとしても、不思議じゃないような気がした。
これは駄目だと私は思った。好きだという気持ちが膨れ上がって破裂してしまう。どうにかして外に出さなければ。あの人の小さめの手や、笑うとはっきりしわができる目尻や、並んだ時の私より低い頭の位置、そんなものばかり脳裏に浮かんで、何にも集中できない。
連絡するのに決意も葛藤もなかった。とにかく会いたい。会うだけならいつでも会えると思っていた。実際に、すぐに返事があって、カラオケにでも行こうということになった。
密室で二人きりになることをなんとも思っていなかった。会えることがただひたすら幸せだと思えた。声を聞けるだけで風船みたいに飛べそうだった。
想いを伝えるのに恐怖はなかった。とにかく言わないと。破裂してしまうから伝えないと。どれくらい好きか。どんなところが好きか。恥ずかしいくらい必死に言葉を重ねて、結局、自分が何を言ったかなんて、ほとんど覚えていなかった。
返事の言葉すら思い出せない。ただ、交際を申し込んで、承諾してもらえた……私が覚えているのはその事実だけ。
あとになって、もし振られていたらどうするつもりだったのかと聞かれた。二人きりでカラオケ中だったわけで、おそらく気まずかったに違いない。けど。どういうわけか、あの時の私には、振られるという可能性がまったく頭になかったのだ。
きっと、私の心からの気持ちが『付き合いたい』ではなく『伝えたい』だったから。伝えた後のことについては何も考えていなかったのだろう。結果としてうまくいって、本当に良かった。
【夫婦】
やはり今日が11月22日だからこのお題なのだろう
けれど、私は『夫婦』という文字を見て
うっ……と気まずくなった
それは自分が誰かと『夫婦』になることはないだろうと思っているからだ
大好きな相手はいる
知り合ってかれこれ13年目か?
とても円満だ、信じられないくらいに。
とはいえ、この国の法律が変わってくれないと『夫婦』は無理なのでね……
なんて。
文字書きの書いたことだ、フィクションかもしれないよ?
ただの愚痴ですね、はい。
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【どうすればいいの?】
どうしたら、じゃなくて、どうすれば、なんだなーなんて思いつつ、今日は気圧のせいか物凄く体調悪いんですわ、それこそ夕飯とかどうすればいいの?ってくらいに。
本当どうすんのよ洗濯もできてないわよ頑張って米は炊いたけどさ。
最悪夕飯がTKGだわよ。
低気圧の体調不良には五苓散っていう漢方が良いらしいってことで、試してみたけど効いた気がしないわ。
あー、怠い、頭痛い。
誰か代わりに大根煮てくれない?
松山揚げとほんだし入れてくれたらいいから。
もっと短くしたかったんですが800字弱です
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【宝物】
同じ小学校に通っていた友人とたまたま高校で再会した。
彼が引っ越したのは両親の離婚が原因だと聞いていた。少し心配だったんだけど、思ったより元気そうでホッとした。
懐かしいねと話をして、どちらからともなく同じ部活に入ろうかなんて言い出した。
「調理部なんてどうかなぁ」
俺はかなり緊張しながら言った。男子がほとんどいない部活だということはわかっている。
「俺さ、弟が生まれたんだよ。信じられるか? 12歳も年が離れてるんだぞ」
流石に驚いている様子の友人に、調理実習で作ったスイートポテトを持ち帰ったら弟がすごく喜んだのだと話した。
「だからさ、他にも手作りのおやつとか、作ってやれないかなあって。料理できる兄ちゃんとか、ちょっといいだろ?」
まだ幼稚園児の弟は俺の宝物である。あの笑顔を見るためなら『男の癖に』なんて言われても構わない。
「でもさ、男ひとりはやっぱり肩身が狭いじゃん?」
だから付き合ってよ、と拝むようにすれば、友人が苦笑して言った。
「……仕方ねぇなあ。一緒に調理部見学しに行くか」
「ほんと? ありがと、恩に着る」
この友人は父親に引き取られたと聞いている。その父親は再婚したりはしていないらしい。
つまりこいつには母親がいない。
忙しい彼の父親は子供に料理を教えてくれるだろうか。無理じゃないかな、と俺は思う。
今時、料理なんてネットで調べればレシピも動画も簡単に出てくる。
それでも、わからないことはあるだろう。誰かに聞きたいことなんかも。
俺と一緒に調理部に入ったら、この友人の今後の『生きやすさ』に少しは良い影響があるかもしれない……なんて。
そんなの俺のエゴでしかないけど。
それでも、せっかく再会できたこいつとの友情も、俺にとっては宝物になっていく気がしたから。恩着せがましくない程度に、力になれたらと思うのだ。
もちろん、その分俺も頼らせてもらうけどね。
【キャンドル】
まいったな。
私は『キャンドル』よりも『蝋燭』という言い方が好みなんだ。
ああ、『アロマキャンドル』は別かな。ひと続きの単語だと思うから。
うん、何が言いたいかってね、今日のお題は私にはとても書きづらいってことなんだ。
それはともかく、私の友人はアロマキャンドルやお香が好きでね。だけど食事とかお茶とか、他のものの匂いを邪魔するから難しいって言ってたな。
何より、のんびりする時間がなかなか取れないらしい。火を使うから目を離すのも怖いって。
もっと皆が余裕のある暮らしを送れるといいよね。