―1つだけ―
1生に1度、
たった1つだけ
願いが叶うなら
金が欲しいとせがむのが
ニンゲン
世界平和を願うのが
ギゼンシャ
救いを求めるのが
ヒガイシャ
人類の滅亡を祈るのが
ドウブツ、ショクブツ、ムシ…etc.
―大切なもの―
人間が飽きもせず
生きられるのは
人それぞれ、
大切なものがあるからだ
そして、それを守りたい、
失いたくない、
そう思うからだ
と、僕の理想像は言った
僕に“大切なもの”なんて
大層なものは存在してない
だからこんなにも
人生がつまらないのか
見える景色が薔薇色とは
程遠いモノクロなのか
発言主が僕にとっての
ヒーローだからか知らないが、
彼の言葉は重く響き、
僕を素直に納得させる
そして彼は
物事の中心を射抜くような
的確な名言ばかりを
生み出している
つまり、こういうこと
失敗作と理想像は
まるで違うんだ
―エイプリルフール―
優しい嘘を
卵のような丈夫な殻に
包まれた優しい嘘をつく
愛され温められたなら
きっとそこに生まれるは愛
―幸せに―
幸せに見損なわれた僕
でも、君だけはどうか幸せに
僕のことなんて忘れて
他の人のことを好いて
甘い甘い恋をして
いずれは自分の意思で
結婚したり、子供も産まれたり
やりたいことを貫いて
自分が納得いくまで生きて
腰が曲がって
顔が皺だらけになるまで生きて
みんなに愛されて死ぬんだ
みんなに暖かく見守られながら
そんな人生を、君には歩んで欲しい
所詮は僕の勝手な願いだけれど
どうか、君だけは
自由に幸せに(=“普通に”)
―何気ないふり―
どんなにことが大きくても
どんなに自分が追い詰められてても
何気ないふりをするのが
いつの間にか癖づいてしまった
きっと小さい頃から
人に迷惑をかけないことを
生かしてもらうことの薄利
として生きてきたから
だから彼に出会ってからも
当然のように何気ないふりをして接した
すると彼は私の“ふり”を見抜いてみせた
そして不安げな面持ちで訊いてくる
「どうしたの」と
私は変わらず何気ないふりを続けた
彼も彼で引き下がらない
はっきり言ってしつこかった
でも、そのしつこさが私の真意には
合っていたようで
私は押され負けて
堅かった口もすんなりと開いた
彼は大丈夫だと思った
彼なら私を守ってくれると思った
彼だけは私を理解して
私のために親身になってくれると
そう思った