―何気ないふり―
どんなにことが大きくても
どんなに自分が追い詰められてても
何気ないふりをするのが
いつの間にか癖づいてしまった
きっと小さい頃から
人に迷惑をかけないことを
生かしてもらうことの薄利
として生きてきたから
だから彼に出会ってからも
当然のように何気ないふりをして接した
すると彼は私の“ふり”を見抜いてみせた
そして不安げな面持ちで訊いてくる
「どうしたの」と
私は変わらず何気ないふりを続けた
彼も彼で引き下がらない
はっきり言ってしつこかった
でも、そのしつこさが私の真意には
合っていたようで
私は押され負けて
堅かった口もすんなりと開いた
彼は大丈夫だと思った
彼なら私を守ってくれると思った
彼だけは私を理解して
私のために親身になってくれると
そう思った
3/31/2023, 3:21:17 AM