―海の底―
海の世界を想像する
キラキラと光る
穏やかな波の海面の下深く
太陽の光も届かない場所
暗く、冷たい海の底
3寸先も見えないほどの暗闇に
並んで浮かぶ2つの淡い光
その光の持ち主は
どんな姿形でいるのか
どんなことを思い考えているのか
何を食べ美味しいと感じるのか
今日も
ありもしない命を想う
―君に会いたくて―
君に会いたくて
ただ君に会いたくて
毎日、毎日、君のもとへ通った
君は動かない
白い部屋にポツンと置かれたベッドで、
もうずっと動いていない
君の目覚めと君の心臓が鳴り止むのでは、
どちらが先なんだろう
ふと頭に過りかけて、頭から振り払う
君は眠り続ける
僕は君に会うために通い続ける
君が目覚めるまで
今日も、飽きもせず、
君のところへ行った
眠り姫の眠るところへ
―閉ざされた日記―
全部、胸にぐっと刻み込んだあの日
出来事、情景、感情、それと周りの反応
心に書き記したように細かく覚えている
でも、思い出したらきっと私は…
だから、きちんと封をして、閉じ込めておいた
思い出しそうなときは、
誰かと賑やかに過ごした
似た場面に遭遇したら、
必ず逃げるようにした
でも…
蘇ってしまった
あまりにも細やかに覚えていすぎて、
走馬灯のように、目の前で駆け回る、
あの日のことそのまんま
いきなり目の前がクラッとして、
倒れそうになったところを、
壁に手を着いて支えた
思わず目を瞑ると
あの日がフラッシュバックして
目に浮かぶ光景
聴覚までもが支配されて
あの時の音、声、言葉
鮮明に聞き取れる
胸の奥が苦しい
動悸すらしてきて
ほろほろと
涙が目に浮かんでは止まらない
あの日の裏から微かに聞こえてくるのは、
壁に手を着いて息を切らす私を
周りが心配する声
応えたいのに応えられない
いっそ気を失ってしまえたら…
(誰か助けて…)
―今、解き放たれし閉ざされた日記―
―木枯らし―
家々に吹き付け、窓を震わせる木枯らし
人々を凍えさせて、去っていく木枯らし
枯葉を攫って、炎を煽っていく木枯らし
駆り立てられたように、勢いを増す大火
一帯を炎に飲まれた街は、
原型を留められていない
地を焼き天を焦がす炎は
テリトリーを展開していく
見る見るうちに街と空を
燻べ色に染め上げていく
1.17
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
知り合いから聞いた実体験を元にして、
想像で書かせて頂きましたが、
表現など、不自然な部分や不適切な部分が
あるかもしれません
もし、不快な思いをされた方がいましたら、
申し訳ございません
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
―美しい―
周りに振りまく笑った顔が美しい
何度負けても立ち上がる姿が美しい
正義感溢れたまっすぐな思想が美しい
太陽を反射する露に濡れた緑が美しい
雪の降り積もる富士の高嶺が美しい
空を染めあげる夕日が美しい
絶望に昏れる悲しげな顔が美しい
荒れ果て堕ちても己を貫く姿が美しい
正義を排除する悪の思想が美しい
小虫に蝕まれた枯葉が美しい
萎れて散っていく花が美しい
屋根から滴る雪解け水が美しい
始まる命が美しい
終わる命が美しい
咲きかけの花が美しい
花弁の散った花が美しい
―“美しい”の基準とは―