3/15/2024, 6:32:28 AM
また、濁流に呑まれてしまった。
わたしにとっては、清流なのかもしれない。
「奪って…」唇が不意に動いた。
今夜も、不純な人間同士が寂しさを埋める為だけに交わし合っているのだ。
純真無垢なわたしの子ども、彼の子どもはこれを見てどう思うのだろうか——。
「寂しそうだね…ママ。」
床に就いた息子が、心配そうに言った。
『そうね、ママ寂しいわね…。』
それからわたしは、息子をそっと抱きしめた。
安心したのか、微かに笑みを浮かべながら、ゆっくりとそのつぶらな瞳を閉じていった。
『この子を守らなきゃ、いけないんだ』
わたしにそっくりなこの子を。
#2
お題『安らかな瞳』
1/6/2024, 11:29:52 AM
重くなったのは、役職だけではなくて。
最寄り駅へ行く途中の足取りも、電車をわざと一本遅らせるほど嫌で、ずっしりとした鉛みたいなあなたとの関係も、そうで。
身体を寄せ合って唇を重ねた夜を、なかったことにはできそうもなくて。
私はなぜ、「あなたに会いに行けてしまう距離」に居続けてしまうのだろう。
きっと会いたくないけど会いたくて、でも会い方が判らないから、少しだけ可能性を残した、いや遺したのかもしれない。
君と一緒に、お父さんになるはずだった人に会いに行くよ。
5歳になった息子を、お父さんに合わせるため。なんていう大義名分を引っ提げてまで、嘘をついて、会いに行くよ。
独り言のように言っていた。「役職上げて、あなたともう一度…。」
重くなったのはむしろ、諦め切れないあなたへの、
愛のほうで。
#1 お題『君と一緒に』