【凍える朝】
今日は私の朝の日課をご紹介しましょうか
朝起きたら顔を洗い、歯磨きをしてから
トーストとホットミルクを頂き、
そして地下室の彼に会いに行くのです
彼は30年ほど前に私の手で冷凍して
今日まで私が大切に保存してきました
ええ、もちろん本物の人ですよ
あの日のままここで静かに眠っているのです
彼を愛しているのか、ですか
いいえ、私には夫も子供もいますので
ですが、先程言ったように大切にしていますよ
彼は私の父ですからね
ふふ、面白いでしょう?
あの憎き父がこんなにも苦しみながら
冷凍保存されているんですからね
【光と影】
僕の脳内は複雑なのだ
脳が同時に2つの意志を持ち、別々のことを考えている
僕はこれを脳の光と影と呼んでいる
光の方は単純で馬鹿
影の方は複雑で聡明
だとしたら、僕の脳内には光と影を統括する統括機関のようなものもあるのだ
脳を統括しきれなくて今にも破裂しそうだけどね
僕は僕自身の脳の光と闇の存在を理解している
統括機関の存在すら理解している
理解?
さて僕の脳のどの部分でそれを理解しているのか
考えているのか
苦しんでいるのか
光と影は今日も僕の脳を理解させようと挑んでくる
【そして、】
来世は可愛く、来世は芸能人として、
来世は金持ちで、来世は才能に溢れていて、
願えばいいよ
ちゃんと叶えてあげないから
君は君自身がいかに幸せかを知るべきだ
あまりに苦しくてあまりに惨めで耐えられないって?
慰めたりしないさ、僕の仕事じゃない
君が願う限り何度繰り返しても叶えてあげない
でもね、僕は君が愛おしいよ
沢山傷ついたね
沢山苦しんだね
大丈夫
君は幸せを自分で掴む力を持ってる
そして、いつか、
生まれ変わる日が来たとしても僕は君を、
「そして、」
tiny love
心春と私の子供はもうすぐ生まれるだろう
女の子だといいなぁ 名前は何がいいだろうか
早く私達の小さな愛の結晶に会いたいなぁ
毎日そんなことばかり考えている
親バカだって?ハハハ…
当たり前だ
こんなに可愛い娘相手にバカにならないわけが無い
大事に大事に育ててきたのだから
ずっと私だけのものだ
一緒に育てようね、心春
今日で上原月乃がアイドルを卒業して1年だ
僕は今でも君の赤いペンライトを振り続けている
「つっきー!こっち見てぇー!!つっきぃーー!」
ドンドンドン
また隣の住人か
「いい加減にしてくれないか。うるさいんだよ」
隣の住人はキレ気味に向かってきたが、無視して扉を閉める
「ごめんね。怖かったよね。」
僕は急いで戻ってそう言った
「大丈夫だよ。ほーら、よしよし」
さぁ、続きをしようね
まだまだ僕を楽しませてくれるよね?
まだ赤く消えない焔を振り続けないといけないんだ
「まだいけるよね?月乃」
月乃の痩せ細った身体も
変わり果てた色のない顔も
吐く呼吸さえも
僕を興奮させる
僕なら君を一生アイドルでいさせてあげられるんだ