曇り
さぁ、始めましょう。
ゆったりと流れるこの時間に甘い香りの
アールグレイ トリコロールを
カードが並べられ小さな人形が動き出した。
素敵な、フレーバー。
彼女は彼にお話を。
彼は彼女にお話を。
温かいお茶の香りは何か空間を満たしたようで。
曇りの隙間から光はまだ差し込まない。
それでもいい。
素敵な、日曜日に。
乾杯。
❦
君と見た景色。
最初は、何気なく見上げていた空。
ただ、今は君とじっくり見ることにしている。
君が絵を描き始めたから。
君の絵は上手いようで下手な綺麗な絵。
昼下がり大きく白いキャンバスをあえて塗らず、
雲を演出した。
晴天と快晴の違いを描いた絵は、
何とも言えぬ圧迫感があった。
ヴィーナスベルトそう名付けた絵は、
淡い懐かしさに駆られた。
綺麗なようで下手な上手い絵。
彼女は、何処に逝っても描き続けるのだろう。
悲しいものだ。
❧❦
手を繋いで帰る夕暮れ。
オレンジのような酸っぱさが僕達を包んでいる。
楽しかったのも束の間。
「もう帰るのが寂しいな」
[やっぱ、そうだよね]
「帰りたくないな」
[じゃあ、もう少し貴方のそばに居ていい?]
え?
彼女は頬を赤らめ僕の腕をつかむ。
止まってしまえ、夕暮れよ。
❦❦
どこ?
水槽の中で苦しむ顔をガラス越しに見た。
暗いようで眩しいそこは私の知らない場所。
上を見上げると、
大きな青い物体が触手を伸ばしている。
ガラス越しに見える人影は不敵な笑みを浮かべている。
どうせ、毒だろうよ。
私は覚悟を決め触手にしがみついた。
「ごぼ、ごぼ。」
肺から、空気がなくなる。
「かひゅ、かひゅ。」
目の前が暗くなる。
死ぬのか、なんて考えてても始まらない。
必死でもがき、哀れな姿を晒した。
[なんて不格好で美しいんだ!!]
知らない男の声。
❧✡
大好き。
大好きだよ。
ずーと大好きだからね。
私の一番の親友。
❧❦