静寂に包まれた部屋に、
使わなくなった部活の道具がある。
元剣道部だ。
部屋の明かりに照らされると胴が光り、
あの3年間が思い出される。
防具を綺麗に磨き甘苦い思い出と共に奥にしまった。
3年間ありがとう。
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別れ際に呟いた。
いかないで、
最終便に乗った。
ゆっくりと地面がずれていく。
心だけ駅に置いてきたようだ。
会えると嬉しいけれど会えない期間が長いと、
お別れが寂しい。
遠くへと 消えていく 僕を置いてって
もう随分 見えないよ 夜が崩れていく
泣いちゃだめ 泣いちゃだめ でもホントは言いたいよ
「いかないで」
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いかないでより
通り雨に濡れる窓から動く景色を眺めていた。
彼は私が必死に取ってきたUSBをパソコンに繋ぎ、
何かを調べていた。
「頭、ぼーと…する…」
彼は私の頭を撫で
[お疲れ、ありがとう。]
と言った。
海の上を走る電車の中から雨上がりを見た。
右に雲が流れてゆき、
空を切り開いたように光が差し込む。
「天使の梯子…」
[ん?あぁ、薄明光線だな]
「うん、私…お迎えかも」
[?!、お前に死なれたら困るぞ、]
「…そ?」
その後の記憶は危ういが彼が
『おやすみ、猫未』
と、呟いたのを頭の隅で聞いた。
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窓から見える景色
窓から大きな薔薇がこちらに語りかけている。
『私はここに居るぞ』と声が聞こえる。
皆誰が王子様か気付かない。
人は見かけでは寄らないと思う気持ちも反面、
どれだけ歌が上手かろうと、
どれだけ演技が上手かろうと、
やはり、人は見かけで判断する。
薔薇の花が私たちの関係、未来を大きく変えたとしても
薔薇に呪をかけた魔女は所詮除け者、
見た目でしか判断できないお前に美しい姿など必要ない
魔女の言葉が木霊した。
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美女と野獣より
形のないものを掴もうとしても
手の中にあるのは形のないものだ。
もし、それが掴めたとしても
目に見えない深いものなのかもしれない。
どうしよう。
どうにもならないか。
こんにちは、はじめまして
さようなら、もう会わない
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