ひとつひとつにたくさんの想い出が詰まっている。
だからこそ手放すことができないの。
想い出に縋りついてるだけなのかもしれないけれど。
この宝物全部がわたしの生きる糧だから。
冬になったら待ちに待ったコタツが出せる。
コタツでみかん、コタツでアイス、コタツでお昼寝。
冬ならではの楽しみだ。
寒くなり始めたらそれはもうすぐにコタツを出したい。
早すぎると咎められたってかまわない。
それでもわたしはコタツが好きだ。
コタツを愛している。
どうせなら来世は可愛がってくれる家庭の猫になって、ゆっくりまったりしながらコタツの中で丸くなりたいものだ。
「うぅ…ぐす…っ」
「なにも泣かなくても…」
「だってぇっ!!」
めそめそと泣く友人。
周りの同級生たちはああ、またやってるなという生暖かい目でこちらを見ている。
「はなればなれなんてやだよ!これから私どうしたらいいの?」
「仕方ないでしょう?クジで決まったんだから。
というか1列挟んだ隣だし。ぜんぜんはなればなれじゃないし」
「かわるよぉ〜!!!隣じゃないんだもん!隣じゃないとわからないところ教えてもらえない…」
「授業終わってからでもいいし、放課後でも大丈夫でしょ。みんなに迷惑かけるのはだめ。わかる?この空気。このビミョーな感じ!わがまま言わないで大人しく受け入れなさい」
「………はぁい…………」
ちなみにこの茶番は席替えや、グループが教師によって決められいる場合などに毎回している。
正直かなり面倒くさい。
どうしてこいつと友達やってるんだろうと考えるのが私の日常だ。
悪い子ではないんだけどね。
冬のとある日。
わたしは運命の出会いをしました。
「それがこの子です…!!!」
じゃーん!という効果音とともに見せられたのは、1つの画像。
「この子って…猫じゃん」
「そう!子猫!!!かぁわいいでしょぉ!」
「運命の出会いっていうから男かと思うじゃん」
「いや、それはナイ。ほらみてよ!めっちゃ可愛くなーい?!この白いもっふもふの毛並み!!ちっちゃいフォルム!ぷにぷに肉球!!!!職場の人から引き取ってくれないか〜って言われて画像見せてもらったとき、これはもう運命だと思ったねっ!」
「あんたねぇ、ペット飼い始めたら終わりだよ?」
「いやだからほんとにそーいうのドウデモイイ。
わたしはこの子がいてくれたらいいの!一生!」
「あ、そう。あんたがいいならいいけどね」
「はぁ…かわいい…ずっとかわいい…一生かわいい…」
「うわー…重症だあ…」
秋風がふく、ちょうどこの時期だった。
お互いの進む未来のために、別れることを選んだあの日は。
あれからもう3年が経っていた。
「うう…緊張するなあ…」
離れ離れになってから一度も連絡を取ったことがない。
連絡先から彼女の名前までとび、通話ボタンを押す一歩手前でかれこれ1時間格闘していた。
「やっぱり今度にしようかなあ…でもなあ…」
うーんうーんと悩み頭を抱える。
彼女の声を聞きたいと思ったのだ。
最近色々有りすぎて疲れてしまって、だから声を聞けたらまた頑張れる気がすると、そう思ったから。
「よ、よし…かける…かけるぞ…って、え?!」
ついに決心してタップしようとした瞬間、着信画面に切り替わる。
そこに映し出された名前は、今まさに電話をかけようとしていた彼女からだった。
「あっあの!もしもしっ!」
〘―――…ひさしぶり。いきなりごめんね〙
「だ、だだっ、だ、大丈夫!!あの、その…ひさしぶり、だね。元気してた…?」
〘うん。あのね、どうしても声が聞きたくなって〙
「え」
〘ほんとにごめんね。迷惑……だったかな…?〙
「そんなことないっっ!!えと、わたしもねっ!」
〘?〙
「わたしもね、いま電話しようと思ってたの。
だから同じ気持ちだったんだって、嬉しくなって…」
〘そっか…。夢が叶うまで連絡とるのはやめようって約束、二人とも破っちゃったね〙
「…うん。でもほんとうに嬉しい。聞いてもらいたいことがいっぱいあるんだ」
〘私も話したいことがたくさんあるの。あの日から今までのこと〙
そうして私たちは、時間の許す限りたくさん話した。
また明日から、夢に向かって頑張るために。