秋風がふく、ちょうどこの時期だった。
お互いの進む未来のために、別れることを選んだあの日は。
あれからもう3年が経っていた。
「うう…緊張するなあ…」
離れ離れになってから一度も連絡を取ったことがない。
連絡先から彼女の名前までとび、通話ボタンを押す一歩手前でかれこれ1時間格闘していた。
「やっぱり今度にしようかなあ…でもなあ…」
うーんうーんと悩み頭を抱える。
彼女の声を聞きたいと思ったのだ。
最近色々有りすぎて疲れてしまって、だから声を聞けたらまた頑張れる気がすると、そう思ったから。
「よ、よし…かける…かけるぞ…って、え?!」
ついに決心してタップしようとした瞬間、着信画面に切り替わる。
そこに映し出された名前は、今まさに電話をかけようとしていた彼女からだった。
「あっあの!もしもしっ!」
〘―――…ひさしぶり。いきなりごめんね〙
「だ、だだっ、だ、大丈夫!!あの、その…ひさしぶり、だね。元気してた…?」
〘うん。あのね、どうしても声が聞きたくなって〙
「え」
〘ほんとにごめんね。迷惑……だったかな…?〙
「そんなことないっっ!!えと、わたしもねっ!」
〘?〙
「わたしもね、いま電話しようと思ってたの。
だから同じ気持ちだったんだって、嬉しくなって…」
〘そっか…。夢が叶うまで連絡とるのはやめようって約束、二人とも破っちゃったね〙
「…うん。でもほんとうに嬉しい。聞いてもらいたいことがいっぱいあるんだ」
〘私も話したいことがたくさんあるの。あの日から今までのこと〙
そうして私たちは、時間の許す限りたくさん話した。
また明日から、夢に向かって頑張るために。
11/14/2023, 11:46:56 AM