かめい

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4/25/2026, 2:50:13 PM

[流れ星に願いを]

―夏休みの天体観測、水瓶座の流星群と重なるらしいよ

放課後、教室の前を通るとそんな話が聞こえた。思わず立ち止まり耳を傾ける。何人かで親しげに話している声が聞こえたが、すぐに別の話題に変わってしまった。

廊下を歩きながら、ふと小さな頃に祖母から聞いた話を思い出す。

あれはたしか何かしらの流星群があると聞いて、珍しく夜更かししながら星を見ていた時のことだ。私が流れ星を見る度、必死に願い事を3回言おうとしては失敗しているのを見て、おばあちゃんはいつものように優しく微笑みながら口を開いた。

「美優ちゃんは、なんでお星様に3回お願い事をすると思う?」

私は少し考えたが答えられなかった。そんなの考えたこともなかったのだ。すぐに分からないと言うと、おばあちゃんは夜空を見上げた。

「お星さまにね、この願いを叶えるため努力するので、どうか見守っていてくださいって伝えるためなんだよ」

その話を聞いて、私は首をかしげた。伝えるだけなんて、意味がないではないか。それまでずっと、最近流行りのシールが欲しいと願っていた私は、抗議の声を上げた気がする。
しかし、その質問におばあちゃんはあっさりと答えた。

「お星さまはね、ご先祖さまなんだよ。だから私たちを見守って、時には少し手助けしてくれる。そんなご先祖さまに、今後何に向かって努力するか、報告するためなんだよ」

そんなの、ただの綺麗事じゃん。思わず私は言い返したが、おばあちゃんは少しだけ悲しそうな顔をするだけだった。今思えば、数年前におじいちゃんを亡くていたのもあったのだろう。

「―っと、危ない」

小石に躓きかけ、私は思い出から戻ってくる。今はおばあちゃんも死んでしまい、会えるのは記憶の中だけだ。

空を見上げると、一番星が光り始めていた。

「おばあちゃん、見てるのかなぁ」

思わずつぶやく。これまであの時のことを思い出すのは滅多になかったが、天体観測の話で思い出したせいかもしれない。確か、あれはうちの学年で自由参加の行事だったはずだ。

私は何を星に願おうか。

そんなことを考えながら、家の扉を開いた。


[追加。タヒ表現あり⚠]


暗い森の中、もう右も左も分からない中で、ふと空を見上げる。すると、一筋の光が見えた。

「流れ星か」

思わずつぶやく。子供の頃は流星群があるときは夜更かしをして、必死に願い事をしていたものだ。

「懐かしいな」

いつぶりに見ただろうか。ここ数年は、人工の光しか見ていなかった。

疲れて痛む足を無理やり動かし、歩き続ける。最初は軽かったはずの背中の荷物が、今は投げ出したくなるほど重かった。

そういえば昔、流れ星は人が死ぬ瞬間に流れると聞いたことがある。ということは、今この瞬間に誰かが死んだのだろうか。

「、ハッ」

ばかばかしい。しかし、こんな状況のせいか1度よぎった考えは頭にこびりついたままだった。

足の感覚がなくなってきた頃に、良さげな洞穴を見つける。座り込み、鞄の中身を取り出した。

数本のビール瓶と開け、一気に飲む。薬を肴に最後の晩酌だ。ぬるくて美味いとは言えないが、なけなしの金で買った最後の贅沢品。

「綺麗だなぁ」

こんなに綺麗な夜空は実家ですら見なかった。最後に見る景色がこれで良かったと妙な満足感を感じる。

薬を飲み込み、ふと思った。俺も死んだら流れ星になれるのだろうか。馬鹿みたいな話だが、そんな事も今は信じられそうだ。

俺の星に誰も祈りませんように。一瞬流れた星にそんなことを願いながら、酒を煽った。

4/24/2026, 2:12:21 PM

[ルール]

私はこの題材で思いつくものがなかったので、ひとまず「ルール」という言葉を調べてみることにした。

やはり想像する通り、「規則」「規定」を表す場合が多い。しかし、中には「習慣」という言葉もあった。なんとなくルールの持つイメージと違うと感じたが、考えてみれば当てはまっているかもしれない。

例えば、朝ランニングをする「習慣」があったとしよう。別に誰もそれをやれと決めていないし強制もされていない。けれど何となく、自分の中で朝はランニングをするという「ルール」が決まっていて、それに沿って行動しているのだ。

これを見て、面白いなと感じた。私の中でルールとは、「守るべきもの」「周りや自分の為のもの」「少し面倒くさいもの」だと思っていた。しかし、習慣のように「なんとなくこうしたい」「いつもやってる」「都合によってはしない」というものも含まれているのなら、案外ルールとはそれほど重い言葉では無いのではと思った。

私は、ルールという言葉を重く見すぎていたのかもしれない。

4/23/2026, 2:16:12 PM

[今日の心模様]

晴れ、雨、曇り。私は毎日日記と共に、今日の心の天気を記録している。

悲しいことがあったけど楽しかったなという時は晴れのち曇りなど、意外に自由度も高い。変わっているとは自覚しているが、これが結構楽しいのだ。

今日も日記を開き、一日を振り返る。飼い猫が可愛かったや、仕事が疲れた、ご褒美に買ったケーキが美味しかった。そんな些細なことを書く。

「今日の天気は何かな〜」

そう呟く外では、静かに雨が降る音がしていた。

4/22/2026, 1:57:07 PM

[たとえ間違いだったとしても]

私には愛しい人がいる。
その人はよく笑い、よく怒り、よく泣く、豊かな人だ。しかし、民衆や王の前では澄ました様子で立っている。
彼女と私は昔からよく共に居た。彼女はお転婆で、よく衣服を泥だらけにしては共に怒られていたものだ。しかし、成長するにつれ段々と庭で走り回ることもなくなってしまった。一緒につまみ食いすることも、蝶を追いかけることも、花冠を作ることも、授業から逃げ出すことも無くなり、次第に彼女は周りから理想の王女と噂されるようになった。
そんな彼女が隠れて深夜まで勉学に勤しんでいることも、実は本を読むより馬に乗って走る方が好きなことも、朝の寝起きが悪いのも、私しか知らない。
社交界でそんな彼女は高嶺の花のような扱いを受けた。言いよる男性はみな、美しい宝石や美しい花、美しいドレスを差し出してくる。彼女がそんなものに興味が無いなんて知らず、馬鹿みたいに胡散臭い笑顔で言いよってくる。

――ある日、国で反乱が起きた。ここ数年の飢饉により困窮した民や労働者が牙を剥いてきたのだ。王も彼女も、必死に財政を立て直そうとしていたことも知らず。
あたりに喧騒が満ちている。人々が叫んでいる声、武器同士がぶつかる音、沢山の足音。そんな中、私は迷わず彼女の元へ走っていた。こんな服邪魔だ。エプロンを脱ぎスカートを破り捨てる。彼女が密かにしていた乗馬に付き合っていて良かった。彼女の部屋の扉を開ける。
「ダリア様!」
名前を呼ぶと、彼女が振り返る。こんな状況だと言うのに扇を口元に添え、美しく気品溢れる姿で立っていた。そんなの貴方の本当とは真逆だと言うのに。
「アリイ、その格好はなんなのですか?」
ダリアは静かに私をたしなめる。昔は私の方がたしなめる側だったというのに。私は彼女の手を握った。
「逃げよう!」
その言葉に、ダリアは一瞬驚いたように目を開ける。そして私の手を振り払おうとした。しかし絶対に離さない。さらに強く握る。
「民がこうなってしまったのは私達王家の責任です。私は責任を「そんなのどうでもいいから!」
またもや戸惑った顔をする。そんな彼女の手から扇を落とし、素顔を見た。
「あなたは王女である前にダリアだよ。泥塗れで遊んでたダリアだよ。」
私は彼女の肩を縋り付くように掴んで言う。それでもダリアはまだ迷ったような表情でいた。
「ここを出て自由に暮らさそう。宝石やドレスとは無縁な場所で、昔みたいに草むらに寝転がろうよ」
私はそっと肩から手を外し、少し下がって手を差し伸べた。
「逃げよう、ダリア」
それを聞き、彼女は少し迷った後に私の手を取ってくれた。そして昔よりも成長した顔で、昔のような笑顔を浮かべる。
「ありがとう、アリイ」
王女とメイドの駆け落ちなんて、許されないことはわかっている。けれど、私たちは王城の裏門から逃げ出し馬を走らせた。