あの日、あの場所。もしかしたら間違いだったかも
しれない。でも僕から見て、君はほんのり笑った様
に見えた。ほとんど植物人間な君は、放っておくと
食事も取らない、置物みたいなものだ。死のうとも
生きようともしない君は正しく植物人間と言うのに
相応しいだろうと思う。ある時自殺未遂をしてから
死ねなかったこと、未来への絶望、とか他にも色々
あるとは思うがその時から彼女は少し壊れてしまっ
たようで。俺は彼女が入院した病院に通いつめるこ
と半年。少しずつ心の傷は良くなってるようで。看
護士さんに、ずっと部屋にいるのも気が滅入るだろ
うと言われたので病院の周りを少し彼女と散歩する
事にした。桜の木の下で、口下手ながらにも一方的
に彼女に話しかけた。たわいも無い話。桜の下。静
かな雰囲気の中少し気になったことを口に出す。
…まだ、死にたい?。彼女は少し頷いて。それから
小さな声で、……けど、君がいるからもう少し頑張
ってみるよ。と言って気のせいかもだけど、少し、
笑った様に見えた。僕は、僕は。彼女の役に。少し
でも彼女の役に立てているような気持ちになって、
【たとえ間違いだとしても】
俺は生まれつき色が見えない。モノクロでしか
「色 」を感じられない。大きく広がる灰色の空、
黒光りするりんご、白黒な虹。色が眩しいなんて感
じたことも無い。ただ、そこに暗い世界が広がって
いるだけ。一度だけで良いから、見てみたいな。
青く照る大空、真っ赤に輝くりんご、カラフルな虹
、どんな世界が広がっているんだろう。見てみたい
だなんて少し、贅沢かな。
【無色の世界】
雨が降った。昨日はぴんく色でいっぱいだったのに
今は細い木の枝ばかり。ふわふわだったのになぁ。
ずっと桜のほうがいいな。えっ、ゆみちゃは桜だけ
いや?…ほうほう、桜は散るからこそ美しいとな?
通ですな〜。桜は散って、草になって、紅くなって
棒になるよね。時の流れとは恐ろしの〜 …でも、や
っぱり桜のままがいいな。
【桜散る】
届かないなぁ。 あぁまったく届かない。君とずっと
一緒に居るけど、この気持ちはまったく届かない。
僕が普段君をどういう目で見てるか知ってるの?
…どう思われてるか、知ってるの? そりゃ初めて
出来た親友、男友達ってやつだ。大切にしたい。
寧ろ僕だけの物にして大切にしまいたい。でも、僕
の本能が、本質がそうさせてくれない。大事なもの
を、希望を、絶望でぐちゃぐちゃにしたいなんて欲
望が。希望を壊したい、そんな欲望が。僕みたいな
ゴミ虫が出来るわけもないけども、希望なんかに僕
なんかが勝てるわけがないけども。でも本能だ、僕
の本質だ。やりたいと思ってしまうんだ。…だから
さ、仕方ないよね?
「…本当に、仕方ないよね?」
【届かぬ想い】
神様へ。
行く年を惜しみながら、新しい年に希望を馳せるこ
の頃。お健やかにお過ごしのことと存じます。
日頃特に信仰もしてはいないのに、時折無性に祈り
を捧げたくなることがございます。そのような時だ
けに祈るわたくしめをどうか許して欲しいと身分相
応ではないですが勝手に願います。さて、わたくし
めも此岸に生まれ幾分か経ちました。正直に申し上
げますと此岸でのどす黒く渦巻くこの社会に疲れて
しまいました。貴殿がなにを思われて私達人間をお
作りになられたかは私には理解の及ばぬ領域ですが
折角頂いた生命を貴殿の為に使えなくて申し訳あり
ません。この生命に既に未練はありません。特に何
かを成すことも出来ず、申し訳ないのですが、貴方
様の元に帰る事をお許しください。
【神様へ】