映画館の照明が落ちた時。
駅のホームに立った時。
くじをめくって広げた時。
ガチャガチャを開ける時。
好きな作家の最新作の最初の一ページ。
ほんの一瞬でも、徐々に込み上げてくるものでも、胸が高鳴る瞬間って、意外にたくさんあるものだ。
END
「胸が高鳴る」
不条理なのはフィクションの世界だけであって欲しいなぁ。
そう思うのに現実は残酷で。
身近な人間関係も、世界の在り方も。
「なんでこんな事が起こるの?」って事ばかり。
この不条理な世界で生きるのに、必要なのはなんだろう?
鈍感さ? 諦め? スルースキル?
そればっかりに傾くのもなんだか寂しい。
END
「不条理」
産まれた時にあんなに泣くのは、辛いことばかりのこの世に出てきてしまった事が悲しいからだ。
そう言ったのは誰だったか。
今、目の前にソイツがいたら渾身の力を込めてぶん殴ってやるのに。
一言も発することなく消えてしまった、小さな命。
白く冷たくなった我が子に呆然とする妻。
開かれることの無かった瞳は、薄い瞼の奥で何を見つめていたのだろう。
「泣かないよ?」
妻がポツリと呟く。
「·····泣かないね」
私もポツリとそう答えて、妻の体を抱き締める。
「やっと会えたのに」
妻の声は震えていた。
「·····そうだね」
私はそれだけ言うのが精一杯で。
「うぅ·····、っあ、あぁぁ――」
妻の泣き声が狭い病室に響く。
妻の腕の中、真新しいおくるみの白が目に痛い。
私は妻と、妻の腕の中の小さな命をまるごと抱き締めて、妻と一緒にこれが生涯最後とばかりに泣きじゃくった。
END
「泣かないよ」
この世界で生きるには、少しくらい怖がりな方がいいと思う。
リスクマネジメントってやつですよ。
END
「怖がり」
たくさん雪が降った日の翌日。昇る朝陽に積もった雪がキラキラと反射している。
波の無い静かな夜。月の光がまっすぐ海面を照らし、風が通るたびに光が揺れる。
線香花火の最後の瞬間。オレンジの火花が一瞬激しく輝き、突然ポトリと落ちる。
お気に入りのネイルを塗って推しに会いに行った午後。よく晴れた会場で撮った写真には、ラメが綺麗に映っている。
静かな部屋で大好きな歌手の歌を聞いている。イヤホンから流れるこの世で一番綺麗な声と、その声が紡ぐ愛のうた。
背の高いガラスの器に芸術的に盛られたパフェ。たくさんの苺とアイスクリームとチョコレート。どこから攻略しようかと登山家のようにスプーンを翳す。
きらきら、キラキラ。
今日もどこかで星が溢れる。
END
「星が溢れる」