木枯らし一号が吹きました。
初霜が観測されました。
春一番が吹きました。
桜の開花が宣言されました。
流氷の漂着が確認されました。
梅雨入りです。
私達はいつまでこれらを見聞きすることが出来るのだろう。もう既に無くなってしまった気象の観測対象がいくつもあるという。
少し寂しいと、感じてしまった。
END
「木枯らし」
美しいとはなんだろう?
美しい声、美しい容姿、美しい立ち振る舞い。
美しい海、美しい花、美しい景色。
美しい数式、美しい建築、美しい仕草。
美しいという形容詞がつく言葉はたくさんある。
例えばもし、人を殺すことが美しいと讃えられる世界があったら、私は人を殺せるだろうか。
それが普遍的な価値観だったら、出来てしまうのだろうか。
そこまでつらつら考えて、その言葉の普遍性と無言の圧が、初めて怖いと思った。
END
「美しい」
美しいけど醜くて、儚いけれど頑丈で、豊かだけれど貧しくて、難しそうだけど単純で、狭く見えて広かったりする。
この世界は生きている人の数だけいくつもその姿が分かれているのかもしれない。
隣にいるあの人とは、同じ世界に生きてるようで実は違うのかもしれない。
重なり合う部分はあるのかもしれないけれど、違う世界に生きている。
END
「この世界は」
〝はたらけど はたらけど 猶我が暮らし 楽にならざり じっと手を見る〟
この歌を詠んだのは明治時代を生きた人だけど、明治、大正、昭和、平成、令和と五つも元号が変わっているのにこの歌がまだ成り立つってどういうわけなんだろう?
どうしてですかね?
END
「どうして」
「〝夢〟がタイトルにつく歌って多いよね」
彼女はそう言って空を見上げた。
低く重く広がる濃い灰色の雲は、今にも雪を降らせそうだ。彼女はそんな空の色を歓迎するかのように唇の端に笑みを浮かべて、「クソみたいな世界に、みんな何を期待してるんだろ」とあまり綺麗でない言葉を吐いた。
「あなたは何か夢は無いの?」
私の言葉に彼女は振り向いて、ニカリと白い歯を見せる。
「寝て見る夢は別にいらない。現実の夢は·····一つ一つ叩き潰してしまいたくなる」
彼女の目が微かに伏せられた事に、気付いたのは私くらいだろう。私は彼女に近付いて腕を差し出す。
「私の夢はあなたの願いを叶えることだよ」
彼女は一度瞳を大きく見開いて、そして小さく肩を竦める。
「だったら·····ここにいる連中みんな××してみなよ」
私は彼女を見つめ、満面の笑みで応える。
「いいよ」
彼女の夢が私の夢。
彼女が夢を見ないというのなら、そんな彼女のありとあらゆる願いを叶えてあげるのが、私の夢だ。
END
「夢を見てたい」