せつか

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5/17/2025, 3:33:29 PM

死ぬまでにあといくつ知らない世界を覗けるだろう。

海外に行ってみたい。
バンジージャンプをしてみたい。
高級リゾートに泊まってみたい。
フルーツ狩りをしてみたい。
スターゲイザーパイを食べてみたい。
伝統芸能を見てみたい。
寝台列車に乗ってみたい。
他にもしてみたいこと、見たいものはたくさんある。

どれだけ実現するか分からないけれど、まだ知らない世界を見たい、知りたいという気持ちがある限り、なんとか頑張れる気がする。


END



「まだ知らない世界」

5/16/2025, 2:49:22 PM

「手放すのに勇気がいるものって何かある?」
「お前」
「·····」
「もうお前のいない生活は想像つかん」
「·····そう」

――でももし、離れた方がお前が幸せになるというなら、その為に最後の勇気を絞り出さなければいけないとは思っている。



END



「手放す勇気」

5/15/2025, 4:10:10 PM

布団に入ってスマホを開く。
毎日の終わりに二つのSNSと三つの文章投稿サイトを巡回するのがルーティーン。
通知欄に赤い丸がついていると、それだけでちょっと気分がアガる。リアクションの件数が数字で分かるサイトだと、カウンターが回る度に「いいぞいいぞ」
って気分になる。

日付はとっくに変わっていて、深夜帯と言われる時間。真っ暗な部屋でブルーライトを浴びながら、ネットの向こうで「いいね」を押してくれた人に感謝の言葉をそっと呟く。

どれだけ仕事がしんどくても、どれだけ政治にムカついても、どれだけ犯罪や事件に胸糞悪さを感じても、ここに来たらリカバリー出来る気がする。
リアルに会っている人の九割は知らない、私の居場所。

私にも灯すことの出来る光があるのだと、気付かせてくれる場所。

それは無くしたくないもう一つの居場所。


END


「光輝け、暗闇で」

5/14/2025, 4:55:09 PM

ドラえもんのひみつ道具で『ありがたみわかり機』っていうのがあった。
ありがたみを知りたいものの名前を言いながらスイッチを押すと、周りからそのものが消えてしまうというひみつ道具。
のび太が「空気」と言ってスイッチを押すと一瞬で空気が無くなって、のび太は悶絶していた(すぐ元に戻ったけど)。

当たり前にあるもの、当たり前にある習慣や仕組み、酸素もそのうちの一つなんだと思う。
酸素の無い宇宙空間に行くには、あんなに沢山の装置や設備が必要になるくらいなのだ。
私達が普段当たり前にあるものとして見たり聞いたり、使ったりしているものは、無くなったら生きていくのが困難になるものもたくさんたくさんあるんだろう。

最近ネットをぼんやり見ていると、強い言葉で何かを否定する人がいて、『ありがたみわかり機』を使ってみればいいのに、と思うことがある。

酸素、で思いついたのがコレだった。


END


「酸素」

5/13/2025, 1:34:12 PM

生まれてから今までの全ての記憶。
その全てを覚えているわけじゃない。
最初の記憶は何なのか。
思い出そうとして思い出せるものなのか。
深くて広い記憶の海は、普段は静かで過ぎていく日々をただ蓄積するだけで。

でも、たまに·····深海魚が打ち上げられるかのように、唐突に過去の記憶が浮上することがある。
浮上してきた記憶は大半が楽しくないもので、そしてその記憶が間違いなんかじゃないのは確実で、私は自分の心が深く沈んでいくのを感じる。

真冬の海ように荒れて、すさんで、暴れる記憶は、いつか暖かな記憶に塗り潰されるのだろうか。
記憶の海は深く、広く、時に私を激しく翻弄する。
沈んだり、浮き上がったり、記憶に翻弄される心はその感情を抱えた新たな記憶を抱いて、やがて忘却していくのだろう。

私が死ぬその時は、楽しかった記憶を思い出しながら、凪の海のような心で逝きたい。


END



「記憶の海」

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